海外のゲストを招いたセミナーに参加したときに良く感じることだが、ゲストの熱弁にもかかわらず、その話の意図がこちらにぜんぜん伝わらないことがある。
通訳者が、ゲストの言葉を正直に訳そうとするあまり、一本調子の抑揚のない話しぶりになると、意味は伝われど、意図が伝わらないことになりかねない。
オシム監督の言葉が心を打つのは、通訳者の貢献も大きいと思う。
「監督が選手のモチベーションを上げようとしているときに、言葉だけを訳しても、結果的にモチベーションがあがらなければ成功とはいえない」
「訳して話すときは監督の強弱通り、そのままやる。チーム全体が監督の意図している方向に行かなければ、訳している意味がない」
通訳としての指導力。
言葉を訳すだけでなく、相手の心に届くよう言葉を選ぶ。
コミュニケーションロボットに求められることは、相手の心に届く言葉をどれだけ話せるか、だ。
現在の「ロボット言葉」、抑揚のない平坦な言葉使いでは、まったくだめだろう。
「監督がギャグを言う。そしたら、絶対に笑わせてやる。
監督が諺を言う。絶対「おおっー」と言わせてやる」
参考書籍 : 「オシムの言葉」 木村 元彦著 (集英社)