禍転じて福と為せ
投稿日時 2010-4-5 20:22:00 | トピック: 視点
| メーカーのリスクマネジメントの難しさをあらためて思い知らされたトヨタ車のリコール問題。 初動対応の甘さとトップの説明の遅れが傷を大きくしてしまった。
トヨタはアメリカの公聴会で電子制御スロットル・システムの不具合について「システムに異常が生じたときに燃料の供給を止めるなどのフェイルセーフが働く」ことを社内の検査で繰り返し行っており、安全性は確保されていると説明した。
製品の安全性の確保については、大きくわけて「機能安全」※1と「本質安全」※2とがあるが、複雑な電子システムの塊となったクルマは「機能安全」を高めることが要求され、またそれが自社内での評価でなく、外部の機関により公に認証されることが必要になってきている。 しかし、日本を代表する典型的なモノづくりのメーカーであるトヨタは、その底流に職人的な「本質安全」の思想があるようで、それはモノづくりにとっては大切なことでも、電子化され、グローバル化してしまった現代のクルマにとっては、落とし穴に陥る危険性があるということだろう。
サービスロボットの安全性の確保は、音声認識技術と共にそれに縛られていると袋小路に陥る長年の懸案事項だが、昨年「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(NEDO)がスタートし、日本としてのサービスロボットの安全性の基準づくりが進められている。 関係者によると「機能安全を満たしたロボットを作り、それを公正な外部機関が認証する」ドイツ型の安全性確保の方向に向かうのではないかとのこと。
サービスロボットの安全性について神経質なまで慎重な日本のモノづくり企業は、今回のトヨタ車のリコール問題によって、ますます強固な安全神話の殻に閉じこもる傾向にあるが、禍転じて福と為す、積極的な行動を求めたいと思う。 そして同時に、ロボットを使うユーザーもリスクを受け入れる覚悟と、行政によるリスクを許容する社会マインドの醸成支援が必要だ。
(※1)機能安全 機能が故障した場合でもシステムの安全性を確保する仕組み。 (※2)本質安全 危険の原因を取り除くことによって安全性を確保する仕組み。
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