日本の一番のアキレス腱
投稿日時 2007-12-8 21:44:00 | トピック: 視点
| 次世代ロボットの安全基準はロボット普及のポイントではありますが、あまりにも過度な安全信仰は画期的なロボットの製造、普及に大きな障害になると危惧している。
今年3月、再生医療の最前線を紹介するシンポジウムがあった。
トカゲの尻尾は切れてもまた生えてくるし、鮫の歯も何度も生えてくる。 ところが人間の場合、失った組織や臓器を自ら再生する能力はほとんどない。
昨年、韓国で捏造が発覚して大きな問題ともなった「ヒトES細胞」。
「ヒトES細胞」とは、受精後まもないヒト胚を培養して人工的に作る「 胚(はい)性幹細胞」のことで、人体のさまざまな組織になる「万能 (多機能)細胞」であり、しかも、無限に増殖するという特性がある。 そのため、患者本人の体細胞の核を抜き取って、卵子に移植し、クローンES細胞を作ることで、移植しても拒絶反応がおきない組織や臓器を作れる次世代医療として期待されていた。
しかし、命の萌芽である胚を操作することの是非や核移植によるクローン人間の誕生の可能性など、安全面、倫理面で多くの課題を抱えていた。
昨日発表された京都大グループによる世界初の「ヒト人工多能性幹細胞(iPS細胞)」作製の成功。
受精卵を壊して作る、これまでの「胚(はい)性幹細胞(ES細胞)」ではなく、皮膚細胞から、あらゆる臓器・組織の細胞に変化する「万能細胞」を作ることに成功したという画期的なもの。
実用化にはまだ時間がかかるようだが、画期的な技術にはリスクがつきもの。
サリドマイド薬禍や水俣病など多くの医療過誤を経験してきた日本人が、実際の効果も未知数な医療に対して、保守的になるのも理解できるが、リスクを受け入れる社会的合意(覚悟)がなければ、時間も予算もつぎ込んだ画期的な科学技術が絵に描いた餅に終わる危険がある。
いい加減な医療行為をする医者がいることは事実としても、医療責任の過度な追及が結果として、先端医療を受けたくても日本で受けることができず、多額の費用をかけて海外に渡らなければならないということにもなりかねない。
脊髄損傷やパーキンソン病などの難病に苦しむ人が一人でも救われるよう、患者の合意があれば、薬事法にとらわれることなく、個別に医療が受けられる制度の確立が必要だ。
医療、ロボットをはじめ先端科学におけるリスクと責任の問題は、「科学技術創造立国」を標榜する日本の一番のアキレス腱になるかもしれない。
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