ネズミが地雷除去に使われているとは、知らなかった。
「アフリカン・ジャイアント・ポーチド・ラット」と呼ばれるアフリカ原産のネズミ。
犬と同等かそれ以上の優れた嗅覚があり、反復的な作業をいとわないため、地雷に含まれる火薬の匂いを覚えさせ、地雷を特定させる訓練をさせたところ、モザンビークで、約200万?(甲子園球場145個分)の土地の地雷除去に成功。
そのネズミたちは「ヒーローラッツ」と呼ばれ、現在、約300匹が活躍。今年は約100万?で地雷817個、不発弾350個を発見したと言う。しかも事故はゼロ。
ヒーローラッツの特色は、
・低コスト(訓練に要する平均期間は9カ月。約70万円/匹)
・維持及び輸送の費用が安い
・事故がない(軽いので地雷が爆発しない)
・寿命が長い(熱帯地域特有の病気に対して抵抗力があり、平均寿命は6〜8年。訓練の成果を持続できる)
・作業時間が短い(200?の場合:約1.5時間で作業を完了。訓練された2人の作業員が金属探知器を用いて地雷の有無を調査すると約8時間かかる)
そして、なにより
・アフリカにある資源(ネズミ)を使うので、地元の人間によって地雷を解決できる。
つまり、先進国の援助に頼る必要がないということ。これは、とても大きいことと思う。
日本でもロボットを含む地雷除去のための機器の開発が行われているが、高価で重いロボットがこのヒーローラッツ以上の成果を上げることが出来るかどうか。
参考:スーパーモーニング(テレビ朝日) 2010年11月10日
先日アメリカで発表された、なんでも掴めて、操作できるロボット。
砂のような粒子が液体に似ている性質から、固体へと変化する「ジャミング転移」現象(※1)を利用して、事前にモノの形状がわからなくても(※2)、細いペンから、水の入ったコップ、やわらかい生卵まで持ち上げることができる。
生卵のようなデリケートなモノを持ち上げる場合、圧力が弱ければ落ちてしまうし、強すぎればつぶしてしまう。このロボットは生卵全体を適切な圧力で掴み、持ち上げる。
人間の生活環境下でロボットを動かすために、日本ではロボットが扱いやすいハンドルなどを開発する「ロボットのためのユニバーサルデザイン」の研究が行われている。
これはロボットの「指」(ハンド)の形状に合わせてモノをデザインするというアプローチで、これはこれで非常に現実的な手法だが、このアメリカのロボットのような、形状がわからないなら、わからないなりになんとか対応させてしまおうという、なんとも力づくな逆転の発想は素晴らしいと思う。
まったく、「アイディアはシンプルだが、効果的で強力」だ。
(※1)粉体は密度が低い場合は流動するが、密度が高くなると流動性を失い、固体のようになる
(※2)粒子を詰めた袋がモノに密着すると、粒子間の空気を掃除機で吸い取り、モノの輪郭に沿った形で固定される
参考 WIRED VISION(2010年10月27日)
2010年10月のロボティック・ライフスタイルニュースをまとめて。。。
<ロボティック・カーサ>
・11月よりパロの販売を開始(大和ハウス)
・NEW商品 → 「旅ナビ」の項
<ロボティック・カー>
・プリウスは自動車の機能を持った情報システムとする自動車の安全性向上に向けた提言を発表(情報システム学会)
<ロボティック システム>
・高速道路での逆走を知らせるナビゲーションシステムを共同開発(日産自動車とNEXCO西日本)
・来年度住宅床下点検ロボットの本格運用を開始(大和ハウス)
・脳活動計測で「指先の動きをPC上に正確に再現する」技術開発に成功(NICT)
・パワーローダーライトの研究開発機関への提供開始(アクティブリンク)
・人間型ロボットの全身動作を直接作成・編集できるソフト「Choreonoid」を開発(産総研)
・NEW商品 → 「インテリジェント非常通報システム」の項
<ロボティック ミッション>
・宇宙滑走路の供用を開始(ニューメキシコ宇宙空港公団)
人型ロボット『ASIMO』(ホンダ)が2000年10月31日に二足歩行に成功してから、今年で10年。歩くだけだったASIMOも、走り、握手し、共同作業を行うまでになった。
この間、自動掃除機『ルンバ』(米iRobot社)は世界で約500万台(日本では約10万台)、手術支援ロボット『ダ・ヴィンチ』(米Intuitive Surgical社)は約1200台(日本では約15台)、アザラシ型ロボット『パロ』(産総研/知能システム)は約1500体が販売され、約50台の無人清掃システム『RFS』(富士重工)が高層ビル等で稼働している。
また、ロボットスーツ『HAL』(サイバーダイン)も商品化され、福祉現場に徐々に導入され始めている。
そして、サイバネティックヒューマン『HRP-4C未夢』(産総研)は、ロボットの専門知識がなくても人型ロボットの多様な振る舞いを簡単に作成できるソフト「Choreonoid(コレオノイド)」により、歌を唄い、ダンスのパフォーマンスまでできるようになった。
子供の頃、遠い未来であった21世紀は現実に生きてみると思ったほどには未来的ではないけれど、100年単位でみれば、21世紀は間違いなく宇宙とロボットの世紀。
これからの10年、ロボット普及のための安全性の基準作りや規格の標準化などが大きなトピックになっていくことと思うが、人に役に立つロボット(機械)は日常生活の中でどの程度受け入れられ、活用されていくようになるのか、巨大市場となりつつあるロボット兵器開発に日本政府、メーカーはどのように対応をしていくことになるのか。
人とロボット(機械)との関係性を見つめていきたいと思う。
Googleは、ロボットカーの技術開発を進めていることを発表した。
ロボットカーの開発には「DARPA Grand Challenge」の研究者が多数参加しており、公道を使用してすでに14万マイル(約22万5千キロ)以上の試験走行を行っているようだ。
Googleが、ロボットカーの開発を行う目的は明快で、それは「テクノロジーを用いて大きな問題を解決する」ため。
ロボットカーが実用化されることで、『毎年世界で120万人以上が亡くなる「交通事故」を半減し、効率的な移動によって「交通渋滞」を減らし、エネルギー消費の削減と生産性に多くの時間を割り当てることが出来る』からという。
片や日本。地方に出かけると誠に立派ではあるけれど、驚くほど車を見かねない道路に出合うのに、つくば市が年内の実施を目指していたモビリティロボットの公道走行実験(※)が、来春以降にずれ込むことが明らかになった。
その一番の原因は、モビリティロボットが現行の道路交通法に適用していないため。
シニアカーに乗った老人の転倒死亡事故や、自転車と歩行者との接触事故が増えていることも警察が神経質になっている原因かもしれないが、モビリティロボットを活用した新しい社会システム全体の構築をいくら謳っても、極めて限定的な実証実験さえままならないなら、モビリティロボットの社会的有効性や安全性、社会受容性等を検証することさえできない。
「テクノロジーを用いて大きな問題を解決する」、イノベーションにはこういう視点こそ必要だ。そうでなければ、機能だけはやたらと高度であるけれど、閉じられた単体(モノづくり)で終わってしまう。
(※)つくば市は2009年1月、「搭乗型移動支援ロボット公道走行実証実験特区」の認定をわが国で初めて受けた。