人々のライフスタイルが多様化している現在、顧客の課題やニーズを捉え、顧客ひとりひとりに最適なソリューションを提供するCRMは、多くの業種で取り入れられている。
CRMは、単なるコンピュータシステムのことではなく、顧客中心のマーケティングのことであり、システムなどを活用した売れる仕組みつくりのことを指す。
現在ほとんどの業種で市場は成熟しており、ポイントプログラムやコールセンターを使って、企業は顧客の満足度を向上させ、優良顧客となってもらえるようさまざまなサービスを行っている。
一般に高額商品のほうが利益が大きく、またメンテナンスなどを通じて顧客との接点を増やすことができるため、新規商品や周辺商品を提案する機会も得やすく、顧客のLife Time Value(顧客の生涯価値を最大化)を向上させることができる。
そのため住宅や車、家電など高額商品を扱う企業は、販売後も利益をあげようとリフォームやメンテナンス、カスタマイズ提案に力を入れている。
ロボットは、少子高齢化による労働力不足という時代背景や介護ロボット、家事ロボットに代表される「役立つロボット」への強いニーズもあり、また人とのインターフェースに優れていることから商品自体への愛着が沸きやすく、カスタマイズ化などによるLife Time Valueも見込める。
だから本来ロボットは、顧客との良好な関係を維持していくCRMがもっとも効果を発揮する商品になるはずなのだ。
ところが現在は、技術的なシーズと顧客のニーズが合致しないため、ロボットの市場がなかなか立ち上がらず、個々のロボット企業が奮闘努力しているというのが、現状。
顧客の苦情や意見も大切なマーケティング資源なので、失敗を重ねて顧客の声を聞くことは大変重要なのだが、ロボットの場合、個々のニーズに技術が伴わなければならないだけに、顧客の声をすぐ商品に反映できないところが大きな悩みどころだ。
環境イベントの企画書をもって多くの企業に働きかけていた80年代終わり頃、協賛を断られる理由の大半は、「予算がない」というものだった。バブルの時代にも関わらず。
そしてもうひとつ良く言われたのが、「環境はお金になりませんから」というもの。
90年代半ば頃、それはネットの業界で言われていた。「インターネットはお金にならない」。
そして今、耳にするのは「ロボットでメシは食えない」というもの。
これには2種類あって、ひとつはロボットが売れず、市場がなかなか立ち上がらないことからのロボットメーカー関係者からの声。もうひとつはロボットを取材したり、調査してきたメディアやコンサルタント関係者からの声。
ロボットは、ビジュアルとしてとても良いのでメディアも好んで取り上げ、いっとき話題となるが、役立つロボットがほしいというユーザーのニーズを満たせないため、市場が立ち上がらず、事業として採算が合わない状態が続いている。
実際、経済産業省のロボットに関するロードマップでも、ユーザーを満足させるレベルまでロボット技術が進み、人に役立つロボットが普及する時期は2015〜25年頃とみており、まだまだ時間がかかるというのが実態だ。
確かに現時点ではロボットの安全基準がまだ確立されていないことや、ロボットのミドルウェアが標準化されていないため、ベンチャー企業の参入が難しく、そのため市場に出るロボットの種類があまりにも少ない。
だから「ロボットでメシは食えない」ということになるわけだが、しかし、今、「環境やネットはお金にならない」と言う人はいない。いわんやロボットおや、だ。
トヨタ自動車は2010年頃に介護ロボットの発売を計画しているし、松下電器や東芝など家電大手もロボットの開発と実証実験を進めている。
自らを元気づけるためにも、「ロボットでメシが食える時代」に、早くしたいものだ。
21世紀は、ロボットと宇宙への時代なのだから。
1988年のケニヤへの新婚旅行をきっかけに、1995年までの間、野生生物生態系、オゾン層、地球温暖化、気象などの環境に関するイベントを数多く手がけていた。
その中でも1993年にグリーンピース・ジャパンと行ったノンフロン冷蔵庫「グリーンフリーズ」のキャンペーンは、印象に残るイベントだった。
グリーンピースはオゾン層破壊を食い止める手段として環境負荷の少ない冷蔵庫を「グリーンフリーズ」としてドイツのメーカーと共同で開発。世界の主要メーカーにグリーンフリーズを製品化するよう働きかけた。
いまでこそ、日本の企業も「環境にやさしい商品」とか「ECO」とか謳っているが、当時、環境問題に関心のあった企業は、日本アイ・ビーエムなど数えるほどしかなかった。
環境イベント開催のための協賛金集めに奔走した経験から、それは断言できる。
世の中はまさにバブルの頃で、排気量や馬力の大きい自動車に代表される、資源浪費、環境などまったく無関心の時代だった。
グリーンフリーズキャンペーンが画期的だったことは、理念を具体的な製品に落とし込み、情報を公開して、それを世界のメーカーに突きつけ、消費者を巻き込みながら、忍耐強く長い時間をかけて、メーカー各社に製品化を実現させたこと。
93年にはじめて行ったグリーンフリーズ展示会には、当初の予想に反して松下電器、東芝、日立などの大手メーカーをはじめ、中小部品メーカーの関係者が、大勢来場した。
特に印象深かったのは、グリーンフリーズを隅々までチェックし、メモや写真を撮って、無言で帰っていく技術者たちの姿。
とはいえ、松下電器をはじめ国内主要家電メーカーがノンフロン冷蔵庫を発売したのは、それから10年もたった2002年。地球温暖化防止京都会議からさえ、5年がたっていた。
グリーンフリーズが、決して高度な技術製品ではなく、途上国でも作れる技術によって開発されていたにもかかわらず。
しかし、松下電器はそれ以降「エコのナショナル」をキャッチフレーズに、環境にやさしい家電商品を次々と発売し、グリーンピースと共同でセミナーを開催したり、「イーユーハウス」まで作るまでになる。
1997年、グリーンピースは国連環境計画(UNEP)から、グリーンフリーズの開発とそれを世界に広めた功績により、「国連オゾン層保護賞」を授与された。
2005年に「DARPA グランド・チャレンジ」で優勝したスタンフォード大学に車両を提供したフォルクスワーゲン社が、その事実をあまり公にしないのとは対照的に、コンピュータソフトウェアで協力したインテル社は、ホームページでかなり大きくこのレースをとりあげた。
現在インテル社は、ホームネットワークのプラットホーム開発に力をいれ、その Viiv テクノロジを搭載したPCを発売するとともに、すでに世界50社以上とViiv対応のコンテンツパートナー契約を結び、家庭におけるデジタル・エンターテイメントの覇権を握ろうとしている。
グランド・チャレンジにおいてもインテル社は、スタンフォード大学と共同で自立走行システムのコンピュータ・ビジョン・ソフトウェアの開発に参加。レース中にはエンジニアを派遣して万全の協力体制をとった。
今後の「車のロボット化」を見据えてのソフトウェア搭載車両への布石と思われる。
将来、ホームネットワーク、次世代自動車、そしてロボットに至るまで、ソフトウェアプラットホームのデファクトスタンダードとして、現在のPCで起きているような「インテル 入っている」の二の舞にならなければいいのだが・・・
2005年11月末に開催された日本SGIフォーラム「コンテンツが主役の時代」で、2005年の「Grand Challenge 」で優勝したスタンフォード大学人口知能研究所の講演があった。
「Grand Challenge 」は、米国国防総省のDARPA(国防高等研究計画局)が主催した完全に人工知能だけで運転する無人ロボット自動車レースのこと。
1回目の2004年の大会では、最長走行距離12kmで完走車は1台もなかったが、2005年はスタンフォード大学をはじめ、23チーム中4チームが212kmのコースを完走。
レースコースは車がやっと通れるような曲がりくねった崖や砂漠などの荒地で、無人の車がさまざまなセンサーやソフトウェアを使って難所を走りぬけていく。
講演では走行時の車から見た映像が紹介され、よくもそんな狭い崖っぷちを自動で走りぬけるものだと感心した。しかも平均時速は31km。
まさかこんなに早く完走してしまうとはDARPAも予想していなかったようで、2007年は市街地での自動走行を開催する。
スタンフォード大学人口知能研究所の今後の目標は、2007年中にサンフランシスコからロスアンジェルスまで完全自動運転させることだそうだ。
この「Grand Challenge 」は、戦場で戦う兵士の生命を守るため、2015年までに軍用自動車の3割を無人自動車にするという軍事目的がまずあり、優勝賞金(200万ドル)も国の軍事予算から支出されている。
平和利用に限定される日本においてはやりたくてもできないイベントかもしれないが、こういう高い目標と高額賞金こそが技術を飛躍的に高めるもっとも有効な手段だということを証明してみせた。
当初は軍事目的であったとしても、民間がビジネスとして応用することにより、社会的な意義も見出されていくのだろう。
講演ではロボット自動車の活用効果として、
自動運転により通勤が楽になり、その分仕事の生産性をあげることができる。
自立をあきらめている高齢者が社会活動に携ることができる。
駐車場に自動的にいける車が普及することによって、都市の不動産状況が変わる。
とし、運転者を安全に支援するシステムが今後確立されていくだろうと述べていた。
ちなみに優勝した車は、映画「キング・コング」のクルーカーとしても使われたフォルクスワーゲンのSUV「トゥアレグ」。
それなりの資金も提供していると思うが、宣伝効果、付加価値、今後のプロモーションへの活用を考えればビジネスとして十分元がとれたのではないか。
ただし、「Grand Challenge 」が軍事目的ということもあり、いまのところHPなどでの掲載はない。