有名な「走りすぎて死ぬことはない」にはじまり、
「作り上げることは難しい。でも、作り上げるほうがいい人生だと思いませんか」
とか
「サッカーの試合は絶対にひとりでは成立しない。君たちの人生も同じじゃないか」
など、人の心を動かすイビツァ・オシム氏の数々の言葉。
コミュニケーション力とは、メディア力。
「何を言うかではなく、誰が言うか」が肝心で、
ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争に翻弄されながらも、世界のいくつもの下位クラブを強豪に育て上げてきたオシム監督だからこそ、その言葉に説得力がある。
ロボットのコミュニケーション能力も、ニュースを読み上げたり、笑いの対話ができるということではなく、
「人生を感じさせる言葉」や「感情表現が伝わるしぐさ」ができるようになることが大切で、
そのためには、ロボット自らが学習し、その体験に基いて「自分の言葉」で語り、
そして、こいつなかなかいいこと言うじゃんと、ロボットが人間にとって「信頼される存在」になる必要があるだろう。
参考書籍 :
「オシムの言葉」 木村 元彦著 (集英社)
「あなたの話はなぜ<通じない>のか」 山田 ズーニー著 (筑摩書房)
子供たちや女性が狙われる事件が頻発していることを受けて、大阪府警察は、事件の発生や犯罪対策情報を携帯電話にメールで配信するサービス「安まちメール」を2006年1月からスタートした。
この「安まちメール」、あらかじめ登録しておくと、府警の全64署管内で起きた事件の概要や犯人の特徴などを発生から1時間をめどにメールで知らせてくれるというサービス。
府内全域か、警察署がある64署管内を選択できるほか、配信を希望する時間や犯罪の種類も指定できる。
ところが、府内全域を選んだ人に5日間で145件のひったくり情報などが送られてきたために、登録変更手続きの問い合わせが府警に殺到。約2万人がエリアを限定するなど登録をやり直したとのこと。
「府内全域を選択したが、あまりの犯罪の多さに怖くなった」という人が相当数に上ったようだ。
「知らない」ことのほうが、かえって幸せな場合がある。
ユビキタスネットワーク社会は、「いつでも、どこでも、誰とでも」つながる一見便利な世の中になる反面、いつでもどこでも情報の洪水にさらされる危険があることを心得ておく必要がある。
参考: 毎日新聞 2006年1月31日
将来、ロボットが公道でも使われるようになると、インフラの整備と共に社会的なルール作りが必要になる。
その際のお手本は、やはり自動車。
道路や信号などの交通インフラ、運転者教育、事故の際の保険など、車の発展と共に長い時間をかけてそれらは整備され、今日に至っている。
2005年に福岡市で公道でのロボット実証実験が行われた。
現在の道路交通法ではロボットが自由に公道を動き回ることはできない。
なにか事故があるといけない、人が怪我をしたら誰が責任をとるのか、など小難しい問題があるため、実証実験では動くロボットの回りを人間が警備する、などというおかしなことになっていた。
とはいえ、あれほど鳴り物入りで登場し、小泉前首相が首相官邸で乗り回すパフォーマンスを演じたあのセグウェイでさえ、いまだ公道を走ることができない現状では仕方のないことなのかもしれない。
また産業用ロボットの強力なイメージやロボットが暴走した場合のリスクを考えれば、ロボットの安全問題が論議されることは当然ではあるにしろ、日本だけで年に8,000人もの交通死者を出している自動車が社会に受け入れられていることに比べて、行政の対応はあまりにも慎重過ぎるという気がする。
車が事故を起こしても「交通事故」だが、ロボットが事故を起こせば「殺人者」になる可能性があるからだろうか。
とはいえ、ロボットの取り扱いや社会ルールに関する説明を運転免許証更新時に聴く日もやがてやってくるだろう。
そして将来、「免許証更新」という言葉は、「ロボット免許」のことを指すようになるかもしれない。
ラブドールというのをご存知だろうか。
表面がシリコン樹脂でつくられた可憐な少女の人形で、オリエント工業から一体50万〜60万円ほどで販売されている。
メイド喫茶が現れ始めた3年ほど前から、秋葉原でこの人形を使ったデリバリーサービスがはじまり、今では全国に広がっている。料金システムは、人間の場合と変わらない。
可憐で美しい肢体とはいえ、人形を相手によくもそこまでと思うが、別の見方をすれば、喋ることも、動くこともない人形相手の商売が成立しているわけで、セックスロボットが誕生したら、相当なインパクトがあるだろうことは予想がつく。
というのも現在のラブドールの対象者が男性に限られているのに比べ、セックスロボットは男女、年齢、身体の障害の有無を問わないからだ。
ロボット普及の鍵はエロスにある、と思っている技術者はたくさんいると思うが、正面きって風俗で儲けることはやはり難しいので、別ブランドでOEM供給するメーカーが出てくるかもしれない。
生身の人間同士の恋愛は、どうしても感情がぶつかり合うことが多く、
いつもよい関係でいられるわけではない。
その点、自分の言うことをいつも聞いてくれるロボットとなら、気使いや気兼ねすることなく、癒しの時を過ごすことができるだろう。
今、韓国のイケメン俳優に熱を上げている女性たちも、エロティックなロボットが登場したら、きっと一気にやられてしまう気がする。
また精巧なセックスロボットの登場は、新たなジャパニーズカルチャーとして海外でも評判を呼び、セックスロボット目当ての観光客が大勢日本を訪れるだろう。
セックスロボットに溺れる者はまだいい。
問題は、セックスロボットを傷めることに快感をおぼえる輩への対応だろう。美しいロボットがズタズタに傷つけられることに心痛まぬ者はいないだろうから、その時にはロボットの「権利」がきっと大きくクローズアップされるに違いない。
「ロボット権」が成立するのは、案外早いかもしれない。
最近の中国で「三高」と呼ばれる「新富裕層」の人たち。
彼らもやはりブランド品が大好きなようで、車はBMW、ノートパソコンはIBM、携帯電話はNokia、香水はChanelが人気だという。
メリルリンチ社によれば、現在世界の高級品の12%を中国人が買っており、2015年には米国、日本を追い越して世界一になるだろうと予測している。
経済力を急進させているロシア、インド、ブラジルなどの「新富裕層」も、きっと中国人と同じように高級品嗜好を強めていくだろう。
このような消費意欲旺盛な、世界の「新富裕層」をターゲットとした「プレミアム・ロボット」の開発が今後重要になっていくと思われる。
ユーザーの要望に応じてカスタマイズできる完全受注型のロボット。
価格は当然高額となるが、安易な価格競争に陥ることなく、世界のロボット市場で 独自のブランドをいち早く確立できる可能性がある。
そのためには、「新富裕層」を満足させるだけの機能やデザインがすぐれていること、プレミアムロボットを購入すること自体が高いステータスとなり、「上質で豊かなライフスタイル」を保障する商品でなければならない。
そして他にはない、自分だけの「特別なロボット」である必要もある。
そうでなければ、特許件数で世界を圧倒している(※)とはいえ、「ユビキタス大国」を目指すお隣り韓国の低価格路線で負ける可能性がある。
韓国では低価格をウリとした一家に一台の「国民ロボット」の普及を目指し、2006年にホームロボット600台を無料で配布。家庭におけるロボットの実証実験を始めている。
ちなみに2005年に都内限定100台で販売された三菱重工のホームロボット、Wakamaruの販売数は、目標の半分以下。無料配布とはいえ600台というのは、相当な数だといえる。
以前、銀行のプライベートバンキング層向けサービスの企画開発に携わった際、強く感じたことは、とても単純な結論だった。
プライベートバンキング層、つまり資産家イコール優良な消費者ではない、ということ。
お金を持っていても消費しない人たちが大半を占める。当然無駄なお金は使わない。
ゆえにプレミアム・ロボット」のターゲットはプライベートバンキング層ではなく、消費意欲旺盛な「新富裕層」とすべきだろう。
※ロボット関連技術の累計出願件数(1990〜1999年)
日本15,038件、欧州3,217件、米国2,471件。
日本のロボット特許出願割合は、65%にもなる。
参考:
毎日新聞 2006年1月15日
毎日新聞 2006年1月16日