2006年3月に開催された自然科学研究機構主催のシンポジウム。
国の研究機関(今は独立行政法人ですが)が合同で科学の最前線を一般向けに講演するのは今回が初めてとあって、300人ほど入れるホールは開場と共に満席。
そこで講演した国立天文台台長の言葉。
「何故、1台100億円もする望遠鏡を国民が支持するのか。
それは喜びの共有があるからではないか。
天文台のホームページへのアクセス件数は、年2,000万ヒットである。
宇宙はどうなっているのか、宇宙に知的生命体はいるのか、
国民もそして我々研究者もそれを「知りたい」。
「知りたい」からやっている。
たとえ「宇宙に生命体がいない」としても、
その「いない」ということが「わかる」
ことに価値がある。
だから、その結果を国民に知らせないといけない。
科学は社会の中で行われるものだ」
仕事柄、日頃会う方はロボット関係者がほとんど。
そして思うのは、ロボットが機械として、また情報処理システムとして出来ているため、元来のメカ好き、パソコン好きの人がやはり多いということ。
なので、広報担当など一部を除いて、関係者はほとんど男性。
あらゆる職場に女性が進出していることを考えると、ロボット業は「男の最後の聖域」かもしれない。
ロボットの実証実験が全国で数多く行われている。
実証結果を踏まえて、その後、実用化を目指すわけだが、実際商品化されるまでには、早くて2年、通常3〜5年位の期間がかかる。
それでも本当に役立つロボットが実現するのは、2020年前後とみられている。
多くのロボット関係者が「今」ではなく、これから「先」のことを思い描いている。
なぜなら「今」は実現できないけど、ロボットテクノロジーやロボットを取り巻く環境の向上により「将来」は実現できるだろうと想うから。
ロボットとの暮らしを考える上で大切なことは、今の生活に不足していることを補うことではなく、将来のロボットと暮らす豊かな未来イメージを想い描くこと。
それは「未来の生活」から想像することなしには不可能だ。
女性の方には怒られてしまうかもしれないが、この「想像力」こそが、男に残された「最後の聖域」である、ハズ。
それが、ロボット関係者に男が多い本当の理由、かもしれない。
参考 : 「よくわかる、未来生活」での石黒周氏の講演より(太字箇所)
2006年3月2日に発売された「ニンテンドーDS ライト」。
発売から61週目の2007年4月末に国内販売台数が1000万台を突破。
今も月50万台ずつ売れているという。
発売当初から「予想をはるかに超える需要で、要望に応えきれない」という任天堂広報のコメントがニュースとなっていた。
2006年3月の同じ日、日本ロボット学会主催のシンポジウムでは、
QRIOやASIMOの技術的に克服しなければならない問題山積み、ということが紹介されていた。
新しいマーケット = 高齢者を取り込んだことにより、活性化するゲーム業界。
まだまだ研究段階のヒューマノイド・ロボット。
なんだかとても癪な気持ちだ。
参考:エンターブレイン 07年4月ゲームソフト・ハード売り上げランキング調べ
60年代後半から70年代はじめのイギリスでは、キング・クリムゾン、ピンク・フロイド、ソフトマシーン、イエス、ジェネシス、EL&P、クイーン、ロキシー・ミュージックなど多数のプログレッシヴ・ロックグループが登場し、それこそなんでもありのアグレッシブさでさまざまな音楽スタイルを取り入れ、ロック・ミュージックを劇的に進化させた。
2005年のロボットシーンは、このプログレッシヴ・ロック登場前夜に似ていたのではないかと思った。
認知心理学、生物学、法律学、感性工学、コミュニケーション理論、軍事戦略、遠隔医療、サイボーグ医療、デザイン・ファション、文学・映像コンテンツなど、ありとあらゆる分野を貪欲に取り込むアグレッシブさは、まさに「プログレッシヴ・ロック」的である。
ブリティッシュ・ロックシーンは、74年の第3期キング・クリムゾン解散と歩調を合わせるように終焉し、しばらく停滞する。
その原因は、自らの理想を求めるあまり、音楽があまりにも複雑で難解になってしまい、多くのオーディエンスが離れてしまったためといわれている。
ロックが再び輝きを取り戻すのは、セックス・ピストルズに代表されるパンク・ロックの登場まで待たなければならなかった。
パンク・ロックの特徴は、単純明快、現実直視というもの。
ロボットは、その内部構造がどんなに複雑で、高度なものであっても、使う人に優しい、わかりやすい操作性と、なにより人に役立つことが求められている。
ロボットは新しい時代に入ったのだと思う。
海外のゲストを招いたセミナーに参加したときに良く感じることだが、ゲストの熱弁にもかかわらず、その話の意図がこちらにぜんぜん伝わらないことがある。
通訳者が、ゲストの言葉を正直に訳そうとするあまり、一本調子の抑揚のない話しぶりになると、意味は伝われど、意図が伝わらないことになりかねない。
オシム監督の言葉が心を打つのは、通訳者の貢献も大きいと思う。
「監督が選手のモチベーションを上げようとしているときに、言葉だけを訳しても、結果的にモチベーションがあがらなければ成功とはいえない」
「訳して話すときは監督の強弱通り、そのままやる。チーム全体が監督の意図している方向に行かなければ、訳している意味がない」
通訳としての指導力。
言葉を訳すだけでなく、相手の心に届くよう言葉を選ぶ。
コミュニケーションロボットに求められることは、相手の心に届く言葉をどれだけ話せるか、だ。
現在の「ロボット言葉」、抑揚のない平坦な言葉使いでは、まったくだめだろう。
「監督がギャグを言う。そしたら、絶対に笑わせてやる。
監督が諺を言う。絶対「おおっー」と言わせてやる」
参考書籍 : 「オシムの言葉」 木村 元彦著 (集英社)