昨年のサッカーワールドカップ。日本代表選手発表時にはTV中継もされ、国民の高い関心を集めた。
そこには、国民皆が共有してきた多くの「ストーリー」があった。
それは、Jリーグ誕生からはじまり、ドーハの悲劇、クラブチームの消滅、フランス大会出場、カズの代表落選、日韓大会開催、中国でのアジアカップ優勝、北朝鮮との無観客試合・・・
ロボットが本格的に普及するまでに、ワールドカップ5大会分くらいはかかることを考えると、その間にたくさんの「物語」を紡ぐことが必要だ。
すでに我々は、歩き、走るASIMOの姿を、愛されながらも、挫折したAIBOの姿を、地道に働くルンバの姿を、見てきた。
今後も多くの失敗と少しの希望を繰り返しながら、ロボットは少しずつ生活の中に入ってくるだろうし、皆が共有できる多くの「物語」を通して、研究者と国民が共にロボットと暮らす生活を考えていくことが、大切だ。
日本代表にサプライズ選出されたJEF千葉の巻選手は、代表に選ばれるのは厳しいという声が多い中で、どのようにモチベーションを保っていたかという質問に答えて、
「もちろん僕も厳しいというのはすごくわかっていました。
でも、本当に多くの人が僕のことを期待してくれて、町でも『頑張れ』と 声をかけてくれました。
そういう応援が僕の支えになりましたし、そのなかで僕自身があきらめてしまったら、そういう周りの人たちにも失礼だという気持ちがありました」
そして、
「改めて、努力というものは人を裏切らないんだなと感じました」
泥臭く、アグレッシブに、前へ進んでいくしか、道はない。
昨年、松下グループの「イーユーハウス」(ECO&UD)を見学した。
「環境とユニバーサルデザイン」をテーマにしているだけに、家全体が住む人と環境にとって快適で、使いやすいように設計されている。
(もちろんモデルハウスなので、生活感はなし)
特に、「キッチンナビ」を搭載したキッチンスペースは、セキュリティ、ネットワーク、エネルギーマネジメントなど情報の管理センターとして位置づけられていて、印象的だった。
環境とユニバーサルデザインの先には、間違いなくロボットと暮らす生活、
「健常者、体の不自由な人、ロボット」が共存する空間がある。
とはいえ、モデルハウス並の大きな家やはじめからロボットとの共生を意識した作りの家でないかぎり、いきなりホームロボットと暮らすのはハードルが高いと思われる。
既存の住宅を考えた場合、個々の部屋のロボット化と家全体をコントロールするスペース(キッチン又はリビング)のロボット化が、次のステップになるだろう。
そしてその頃には、部屋を動き回って掃除するロボットや洗濯物をきちんとたたんでくれる洗濯ロボット、食事後の食器を片付けてくれるテーブルウェアロボットなど、家電を進化させたロボットたちがきっと活躍していることだろう。
米国国防総省高等研究計画局(DARPA)は、2007年11月に開催される第三回「Grand Challeng」の大会要項を発表した。
今回は、前回までの砂漠コースから都会のコースに舞台を変え、
都市に設定された60マイルを、
交通規則に従い、障害物を避けながら、他の車の流れを乱さず、混雑する交差点を通り抜け、
ロボットカーを走行させるというもの。
6時間以内に完走した入賞者には、1位200万ドル、2位50万ドル、3位25万ドルが贈られる。
軍事利用を想定しているとはいえ、それにしてもなんとココロ踊るプロジェクトだろう。
スコンと抜けた明快さ。
そして、なによりプロジェクトを「一言」でいえる力強さがある。
映画「2001年宇宙の旅」に登場する人口知能コンピュータ「HAL9000」。
アーサー・C・クラークの種本「失われた宇宙の旅2001」によると、当初、それは自律移動型二足歩行ヒューマノイドとして考えられ、「ソクラテス」という名前だった。
ちょっと長くなるが、ソクラテスの外形は以下のように描写されている。
「ソクラテスは平凡な筒形で、あちこちに見える検査ふたの下には、電子機器が隠れている。
両腕は、脚をもっと細かくデリケートにしたものだと思えばいい。
右の手首から先は単純な三本指となり、ぐるぐると回転する。
左手のほうは、万能工具で、いろいろ取り揃えた便利な器具の中には、コルク抜き兼缶切りも含まれる。
首から上は顔ではなく、種々のセンサーの集合から成るむき出しのフレームワークである。
一台のTVカメラで360度の視野が得られるが、これは四つの広角レンズがそれぞれ四つの方向を向いているからである。
人間と違い、ソクラテスには自由に動く首は必要ない。
彼はぐるりをいっぺんに観ることができるのだ」
この種本には映画の製作過程で失われたオリジナルの原稿が載っており、それにまつわるエピソードも含め面白いが、
ソクラテスがそのまま登場していたら、「2001年」はきっとありきたりの映画になっていたことだろう。
ヒューマノイドが宇宙船を操縦するというのは、ロボットが車を自分で運転するようなもの。
宇宙船がロボット化(HAL9000)しているからこそ、制作開始から40年たってもリアリティを感じさせるのだ。
作者もヒューマノイドでは、やはり無理があると感じていたようで、ソクラテスのことを
「あのくそいまいましい金屑のかたまり」と自虐的に描写している。
とはいえ、アーサー・C・クラークは、ロボットの進化について登場人物に次のように言わせるのを忘れていない。
「(ロボットは)いまだ原始段階にあるものの、彼らは学んでいく。
すでに人脳の及びもつかない複雑な問題を処理しているのだ。
さほど遠からぬうちに、彼らは自らの後継者をデザインし、ホモ・サピエンスには理解できないゴールへと手を伸ばすようになるだろう。
(中略) その日が来ても彼らがおのれの造り主たちと仲良くしてくれてたら・・・そう願わずにはいられない」
出典: 「失われた宇宙の旅2001」
(アーサー・C・クラーク著、伊藤典夫訳 / 早川書房)
船橋から幕張に至る湾岸地区は、IKEAをはじめ、東京インテリア、大塚家具、ROOM DECOなどの家具インテリア店や、ららぽーと、ビビットスクエア、コストコ、カルフール、イオンなどのショッピングセンター、またYAMADA電機、コジマ、トイザらス、VIVAホームなどが点在し、勢いのある旬な店が多い。その反面、事業採算が合わず撤退する店も多い日本有数の激戦地である。
それらの店を回って思うことは、いまロボットを販売するとはどういうことかということ。
例えば「IKEA」にくるような、マニアではない普通の人々が求めるモノとは、
楽しくステキな毎日を予感させ、
シンプルで低価格、
かつ機能のしっかりした、モノ。
人々がロボットに求めるモノもきっと同じハズ。
経済産業省のロボット技術戦略マップによると、ロボットの「本格普及」は2015年以降。2010年までは業務用の警備・掃除ロボットや家庭用留守番ロボットなどの「プレ普及期」としている。
あと10数年、ロボット普及をおおらかな気持ちで乗り切れるか、それとも事業採算に合わず撤退するか、正念場が続く。