1970年に16,000人を超えた交通事故による死亡者数は、35年をかけて7,000人を割るまでになった。その反面、事故件数は増加傾向にあり、100万件近くに上っている。
2006年に開催された「人とくるまのテクノロジー展で講演された芝浦工業大学の古川修氏によると、
交通事故原因の58%はドライバーの認知ミスによるもので、判断ミスが23.5%、操作ミスが17.5%。
これらのミスを少しでもなくすためには、自律型先進運転支援システムと協調型運転支援システムとの連携、
つまり、クルマと道路(環境)の知能化が共に必要で、車と車、路と車、歩行者と車の「インフラ協調システム」の研究が現在進めているとのこと。
ただし、ドライバーがシステムに依存してしまってはいけないので、システムによる効果との兼ね合いが難しく、事故低減効果の評価手法の確立を今後の課題に挙げていた。
また、トヨタ自動車の井上秀雄氏によると、
衝突安全、自律型予防、インフラ協調システムが実現すれば、交通事故を現在より60%低減できるだろうとのこと。
ちなみに、交通事故による死亡者数は先進国で10万人、世界では50万人。
これは1日3機のジャンボジェット機が墜落しているのと同じ数だそうだ。
毎日こんなに死傷者が出ても社会的に受容されるのは、例えリスクがあっても
車が、便利で、役に立ち、効用がある、と人々が認めているからだろう。
自律型ロボットもそうなっていくのだろうか。
クルマが故障した場合、ディーラーの修理場にもっていくわけだが、現在クルマに搭載されているマイコンの数は100個くらいあり、下手に調整したりすると電子制御全体に影響が出る可能性があるため、プロの整備士もテスターをかけて、問題箇所を特定し、部品交換するだけということが多くなっている。
自動車メーカーも不具合のクルマを出さないよう大変な努力をしているが、ソフトウエアがこれだけ複雑になり、開発期間も短くなるとどうしても不具合は避けられない。
国土交通省のリコール対策室の発表によると、2005年のリコール届出台数は、556万3千台。
クルマのエレクトロニクス化にあわせるように、リコール届出件数が急激に増加している。
これは、将来どんな不具合がでるのかメーカー側も予測できないため、出荷時の保証だけでなく、出荷後の補償に考え方を切り替えた結果ともいえる。
自動車流通研究所による調査によると、車を単なる移動手段と考えている人の比率は44%。
運転自体を楽しむFun to driveの割合は14%にしかすぎない。
その要因として、都市部への人口回帰や消費者のインドア志向化、女性の運転免許保有率の向上によるスーパーで物を買うのと同じ購入感覚などを挙げている。
車が誕生して120年。
「車の家電化」が着実に進んでいるようだ。
税金やガソリン代などのランニングコストを考えれば、安全面や居住性が向上した「軽」で十分、と思うのも当然かもしれない。
昨年公表されたロボット政策研究会の報告書は、一昨年の中間報告で取りまとめられたことを踏まえて、市場環境、安全性、技術開発の3つを柱に構成されている。
特に「安全性確保」には、資料編での事例を含め、かなりのページを費やしている。
トヨタや松下電器など大手メーカーが表だってロボットの開発を発表しないのは、技術的なことプラス、なによりもこの「安全性確保」がまだなされていないことにある。
安全性の確保は、今後、法律も含め時間をかけて整備されていくことと思うが、報告書では、ロボットの安全性の検討にあたっては、
「ユーザーがサービスロボットを使うことにより、効用を感じるからこそ、その代償としてリスクを受け入れる」
ということを認識すべきとしている。
つまり、研究のためのロボットの安全性を検討するのではなく、ロボットが現実に使われること、つまり「効用」があることを前提に安全性も考えるべきであると。
それは、服用されない薬について、その安全性をいくら研究してもあまり意味がないのと同じかもしれない。
昨年発表された、ロボット政策研究会の報告書。
今後のロボット政策についてとてもわかりやすくまとめられている。
まず、ロボットを
「人間の活動領域を拡げうる技術・製品」と位置づけ、
そして、
「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」のことを「ロボット」と定義。
「ロボット」のイメージは、「検索ロボット」から「ヒューマノイド型ロボット」まで非常に幅広く、これまでもいろいろな定義づけがなされてきたが、
ここではロボットを「カタチ」ではなく、
「市場で必要とされる機能を発揮するために要素技術を統合したもの」
として、3要素あれば自動車や情報家電もロボットとみなし、ロボットを広い視点で捉えている。
これは、ロボットの市場を拡げていく上でとても大切な「見方」。
この定義を踏まえ、報告書は今後のロボット政策の方向性に関し、
?市場環境の整備
?安全性の確保
?具体的な用途を想定したロボット技術開発
を提言している。