ホビーを除き、世界で10万台以上売れた家庭用ロボットは、ソニーの「AIBO」シリーズ(約15万体)とiRobot社の「ルンバ」シリーズ(約200万台)だけしかない。
ネットリサーチが先年発表した「家電に関するアンケート結果」。
掃除ロボットについての項目があった。
(どのメーカーのものかは明確になっていないが、現在国内で販売されている掃除ロボットは「ルンバ」シリーズだけなので、対象機種は「ルンバ」と思われる)
N数が24と極端に少ないとはいえ、その結果は、
満足、やや満足をあわせた顧客満足度は25%しかなく、
不満、やや不満な人は29.2%もおり、今後掃除ロボットがほしい人は9.5%のみ。
(ちなみにダイソン社の商品と思われるサイクロン掃除機の満足度は76.6%にのぼり、今後サイクロン掃除機を欲しい人も25%いる)
「ルンバ」は、主に富裕層をターゲットにプロモーションを行っているだけに、顧客満足度の低さはかなり気になる。
購入者の3割が不満をもつ商品というのは、やはりなんらかの対策が必要だろう。
欧米や韓国では、掃除ロボットの売り上げが伸びているにもかかわらず、日本でのこの低評価は一体何故なのか。
段差や家具類の多い日本の住宅事情や部屋の角の埃が取れないなどの機能面、割高感のある価格や製品の質感の低さなど、費用対効果で「効用」が感じられないことがその要因かもしれない。
しかし、留守の時や寝ている間に自動的に部屋を掃除して、いつも快適な状態にしてくれる掃除ロボットは、イノベーションを伴う新しいライフスタイルとして、日本でも必ず定着していくだろうと思われる。
まったく新しいコンセプトの商品には、まずはおおらかに接することも必要だろう。
しかし、世界一厳しい日本のユーザーに「役に立たないロボット」という
殺しの烙印だけは押されませんように。
掃除ロボットは、ロボット関係者の中でも関心が高く、また実際市場ニーズもあると思われている。
掃除ロボットの代表格は、米iRobot社の「ルンバ」(Roomba)シリーズ。
2002年からの販売累計が全世界で200万台を突破。
その他では、米ユリーカ社の『Robo Vac』、米メタポ社の「Clean Mate」、スウェーデン・エレクトロラックス社の『Trilobite』、独ケルヒャー社の『RoboCleaner』、韓国LG電子社の『ROBOKING』、韓国マイクロロボット社の『Ubot』、韓国ユジンロボティックス社の『iClebo』など、様々なメーカーが発売又は発売を予定している。
掃除ロボットは、パートナーロボット市場でもっとも早く立ち上がり、広く普及すると予想されており、今後も世界的には堅調な市場拡大が続くと思われる。
ところが日本では、掃除ロボットの販売実数は、数千台に留まっていると思われ、掃除ロボットの開発を発表している松下電器産業、東芝、三洋電機など大手家電メーカーもいまだ発売にはいたっていない。※
<つづく>
※東芝が輸入販売していた『Trilobite』は、現在販売を中止。
iRobot社の製品を除いて上記掃除ロボットは正規販売されていない。
ロボットの新製品発表会に行くたび、その「実力」以上に多くのメディアが取材に来ていることに驚かされる。
ロボットが「絵になる」ということもあるが、ロボットへの「期待」の表れでもあるのだろう。
先年、経済産業省が発表した「新経済成長戦略」。
人口減少下でも国が「成長」を続けていくためのシナリオを提起している。
成長のためのキーワード は、「イノベーション」。
「世界のイノベーションセンター」として、ヒト、モノ、カネ、ワザ、チエの構造的施策の重要性を強調している。
そして、燃料電池、ロボット、情報家電などの戦略重点分野への集中と加速、双方向連携の「イノベーション・スーパーハイウェイ」構想を宣言している。
インターネットや携帯電話で情報が飛び交い、ロハスや農的生活を求める人が増える中、人々のニーズが一体どこにあるのか、欲っするものをほとんど無理やり探しつづけなければならない豊かな日本社会にあって、
ロボットは、スポーツ、宇宙と並び、人々の「ハートに火をつける」存在として、今後も注目を、集めることだろう。
そして国の重要戦略分野として、ロボットの研究開発に予算が重点的に振り向けられる。
それは、多額の税金が使われるということ。
予算がつき、プロトタイプを作り、華々しく発表して、それでおしまいの繰り返しでは、
ロボットに向けられていた優しいまなざしが、いつ厳しい目つきに変わるかわからない。
「新経済成長戦略」では、イノベーションを進めるこれからの10年を
明るい未来が来ることを示す「残された10年」と述べている。
ロボット開発の本当の「実力」が問われている。
経済産業省が昨年4月に発表した「技術戦略マップ2006」。
情報通信、ライフサイエンス、環境・エネルギー、製造産業の4つの分野について、現状把握と向こう30年に渡る、新しい技術の導入シナリオ及び技術ロードマップが、300ページを超える分量で事細かに記述されている。
ロボット、宇宙、ナノテクなどを扱う製造産業分野で、「人間生活」という項目がある。
これは、「健康寿命80歳」を見据えての、人間の感性や生活空間と親和する技術革新について扱っており、誰もが安全・安心で健康に暮らせるための「4つの将来のゴール」を設定している。
その4つの将来のゴールのひとつが、「安全快適なモビリティーの実現」。
それは、「乗ると元気になるモビリティーがあり、誰もが安全、快適かつ省エネで自由に移動することができる社会」を目指すというもの。
ここで重要なのは、移動する手段が「車」ではなくて、「モビリティー」としているところ。
高齢になっても、誰もが健康で生き生きとした生活をおくることを望んでいる。
肉体や感性の衰えがあったとしても、それを技術が補い、自由に移動できる手段(モビリティー)があれば、家に引きこもってしまうことも少なくなる。
機械に人を合わせるのではなく、機械が人間に親和すること。
トヨタが愛知万博で発表した「i-swing」は、「安全快適なモビリティー」を具現化したものであり、今後ロボットの要素技術は、ロボット単体だけでなく、人々の暮らしを豊かで幸せにする技術として、住まいやクルマ、環境など様々な分野にどんどん取り入られていく。
ロボットと暮らす上質で新しい生活、「ロボティック・ライフスタイル」は、静かに、そして確実に始まっている。
ハイブリッド車は全体の7割弱が電装品(エレクトロニクス)で、燃料電池車になるとその比率は9割程度まで上がる可能性がある。
東京大学の新誠一氏は、エレクトロニクス化によるクルマの将来について、車に装備されている当たり前の物をひとつずつ消していくというおもしろい試みをしている。
キー、3連メータ、ミラー、窓、ハンドル、アクセル、ブレーキ、ガソリンエンジンを消し、最後にどうしても消せないタイヤについては、タイヤの中にモータを搭載したインホイールモータにして、
「タイヤをつければすべてのものがクルマになる」
という、あえて極端なストーリーを示している。
そして、最後にクルマのロボット化について触れ、
「数百万のロボットを自動車という名前で売っていこう」
と提案している。