昨年8月、経済産業省で行われた「ロボット技術戦略マップ2006 成果報告会」。
現状のロボット技術の課題と2025年までのロボット技術の方向性について、下記分野ごとに報告があった。
?生活支援分野
?製造技術分野
?特殊環境分野
?RT(Robot Technology)の他分野への応用
<?〜?は今回追加調査(ローリング)が行われたもの>
当日配布された220ページを超える「成果報告書」。
その冒頭、
生活支援分野における2025年の市場規模予測 4兆円に対して、
「・・・この統計が現実のものになるには、人手を代替できる具体的なロボット製品が開発されることが前提になるが、現時点では、
そのようなロボットを開発すべきという期待は存在するものの、まだ、具体的な製品は存在しない。
したがって、統計が示す将来のロボットの市場規模は、期待の上限値と解釈すべきで、適切なニーズに答えるロボットが開発されない場合は、
市場規模0円もありえることに留意する必要がある・・・」
とノッケからシビアな現状認識を示していた。
<つづく>
◎技術戦略マップとは
経済産業省が、産官学約400名の知見を集めて、原案を作成。
新産業のために必要な技術目標や製品・サービスの需要を創造するための方策を示したもの。
ロボット、宇宙、がん対策など市場や社会ニーズ実現に必要な24の技術分野を取り上げており、
?導入シナリオ ?技術マップ ?技術ロードマップ
の3部構成で、研究開発の成果が世の中に出て行く道筋を示す。
定期的に見直す(ローリング)ことで情報の質と制度の向上を目している。
私が住んでいるマンションは、居住者全員分の駐車スペースがないため、「空き」が出るまで、長い順番待ちをするものだった。
ところが3年ほど前から「空き」が出ても、申し込みのない状態が続いている。
原因は、居住者の高年齢化と経済的理由から。
それと、クルマを持つことに必要性を感じない人が増えてきたことも大きな要因かもしれない。
私の愛車も最近では、荷物を運ぶ道具に成り下がっており、その割に維持費がかかることを考えると、今後もクルマを所有し続けるかどうか。
ただクルマがなくなってしまうと生活の幅が限られてしまうので
(これをモビリティ・デバイトという。車を運転できる人と出来ない人の間に生じる『移動機会の格差』)、
やはり移動体はほしい。
屋内から屋外へ、人の行けるところはどこでも行ける「パーソナルモビリティ」の登場は楽しみだが、まだまだ先の話。
現実的なチョイスとしては、最近増えてきたカーシェアリングか。
エネルギー、地球環境、安全対策、インテリジェント化、軽自動車やハイブリッド車へのシフト、販売競争、業界再々編・・・
クルマを巡る課題は世界規模で、しかも同時に進行するだけに、技術屋さんの悩みは、ますます深くなる。
学生の頃に訪れ、今でも強く印象に残る場所として恐山がある。
ランプ明かりひとつの掘っ立て小屋の温泉場。月明かりに青白く浮かび上がる宇曽利湖。カタカタと音をたてて回るおびただしい数の風車・・・
他のどことも違う独特な雰囲気があった。
そして、訪れた日がたまたま「秋詣り」の日だったため、死者の霊魂を呼び寄せるというイタコの「口寄せ」が行われていた。
しかし、当時の私は霊魂など信じていたわけでもなく、また元気で若かったこともあり、何を言っているのかさっぱりわからない津軽弁に、
なんで死んだ人が皆津軽弁を話すの?、外国人でもやっぱり津軽弁なわけ?などと失礼な屁理屈を考えたりしたものだった。
昨年、イタコの「口寄せ」に癒し効果のあることが青山県立保健大学の藤井教授によって発表された。
青森県内の病院に通う慢性疾患患者670人への聞き取り調査の結果、232人が「口寄せ」を利用したことがあり、そのうち80%近くの人が「とても心が癒された」「話を聞いてもらい、落ち着いた」となんらかのプラス効果を得ていたという。
「口寄せ」で「そこまで我慢すれば良くなる」と問題解決の時期を示すことで、悩みを抱えた患者に安心感や前向きに生きる力を与える効果があるようだ。
元気で健康な時にはイタコさんの助けなどいらないだろう。
しかし、心や身体が弱っている時にイタコさんが身近にいたら、どんなに勇気づけられることか。
心のよりどころとしての「イタコの存在」。
コミュニケーション・ロボットを考える上で、なにかヒントを与えてくれるかもしれない。
<つづき>
機能的で、美しいロボット「ACM-R5」。
でも広瀬先生が目指しているのは「真に実用的で役立つロボット」。
東工大は、文部科学省が推進する「21世紀COEプログラム」の平成15年度/機械・土木・建築・その他工学部門で補助金を受けており、
その開発状況(中間評価)を広く国民に知ってもらう必要から、
夏休みにロボットに関する様々な催しを実施している。
展示披露された30余りの特異な「形態」のロボットは、どれも想像力に溢れ、見るものを魅了する。
しかし、そのほとんどが実際の現場で、「役に立って」いないという事実。
国からの補助金を受け、様々な分野から優秀な頭脳を結集し、広瀬先生をはじめ多くの研究者の長年の努力にも関わらず、
未だ「真に実用的で役立つロボット」は、市場に登場していない。
「役立つロボット」の開発は、それほど困難なチャレンジなのだと思う。
でも、21世紀は間違いなくロボットと宇宙の時代。
だからこそ、ロボットの研究開発を応援すると共に、納税者の一人として、
その「役立ち度」をしっかり見届けていきたいと思う。
以前ケニアの国立公園を巡ったとき、野生動物の美しさに心底感動したことがある。
特に、彼らの走る姿は躍動感に溢れ、いつまでも見ていたいと思った。
映画監督の黒澤明、小説家の三島由紀夫、建築家の安藤忠雄の各氏に共通するのは、「美しさ」を目指した(している)こと。
それは、
「映画」でしか、「小説」でしか、「建築」でしか、
表現できない美しさの追求。
これまで見た、
ロボットでしか表現できない、ロボットらしい美しさを感じるロボットに、
水陸両用ヘビ型ロボット「ACM-R5」がある。
2005年の愛知万博にも出展していたのでご覧になった方も多いと思うが、
長年、動物や昆虫の動きをヒントにロボットを研究開発されている東京工業大学の広瀬茂男先生のロボット。
からだをくねらせ、自在に動きまわるその姿は、ロボットならではの躍動感と美しさに溢れていると思う。