<つづき>
RT(Robot Technology)とは「ロボット技術を活用した、実世界に働きかける機能をもつ知能化システム」のこと、つまりロボットを「形ではなく、機能」として捉えている。
成果報告書では、RTの応用分野として自動車と情報家電を取り上げている。
自動車は通信、システム統合、自動制御などRTとの関連性が強く、将来の自動運転に向けて、今後もロボット化を進めていくと思うが、
RTをそのまま応用できることは実際少ないようで、成果報告書でも
「自動車に使われる電装品の一定割合がRT応用の対象になる」といった概念的な説明で終わっている。
きっと自動車の専門家からいろいろ意見があったのだろう。
「RTを他分野に適用する場合、既存の置き換えでなく、新規の応用、新規なニーズを実現するためのブレークスルーとしてRTを利用されるような課題を探す努力が必要」と述べている。
情報家電(TV、DVD、パソコンなど)については、
白物家電(冷蔵庫、洗濯機、エアコンなど)、住宅設備(システムキッチン、トイレ、照明など)、防犯システム(監視カメラ、バイオメトリック認証など)と連携したRTの活用を謳っている。
それは情報だけでなく、物理的な生活の支援。
例えば、
RTによる介助、介護、見守り。
RFIDを利用した「収納ロボットシステム」(日用品を棚からとってきてくれる。しまってくれる)。
RT技術を用いて、便利でより快適な人にやさしい住まいの実現をめざしている。
ちなみに平均的な住宅における電機・機器設備の住宅費に占める割合は8%、セキュリティシステム、最新家電を導入した場合の割合は20%前後になるそうで、
報告書では、約120万戸の新築住宅の2割がRT化された電機・機器設備を導入した場合の「絵」を描いている。
安全規格やサービスの標準化などRTを他分野に応用していく上で今後クリアしなければならない課題は、多い。
しかし、ロボットは単体としての活用ではなく、やはり車や家を含めた社会システム全体の中で考えていくべきだろう。
ロボットとの暮らしを通して上質で創造性豊かな生活を楽しむ、「ロボティック・ライフスタイル」。
その序曲は、まだ始まったばかりだ。
<つづく>
<つづき>
災害レスキュー、原子力プラントメンテナンス、宇宙・海洋などの特殊環境下は、ロボットの活躍がもっとも期待され、またロボットの存在意義が一番明確になる分野。
人間にとって危険な状況を避けるところに、そのニーズがある。
ただし、技術の高度化による我が国の産業競争力向上には貢献するものの、いずれも「特殊な環境」なだけに、ユーザは限定されがち。
そんな中、市場ニーズもあり、またユーザも多いのが、建設・土木の分野。
建設物解体時の作業員の安全や危険物の飛散防止、廃棄物処理に伴う分別・再資源化など、日本のいたるところに「人間にとって危険な」 = ロボットが活躍できる、「作業現場」が溢れている。
技術的困難さやコスト的課題など多くの問題は、もちろんあるだろう。
また脚光を浴びる災害レスキューロボットなどの必要性にも異議はない。
でも、裾野の広さと影響力、また市場ニーズを考えたとき、「特殊環境」におけるもっとも重視すべき分野は、きっと地味な「建設・土木」だろう。
<つづく>]
<つづき>
これからの日本の大きなテーマ、「少子高齢化」。
その解決策のひとつとしてロボットが期待されている。
特に高齢者の自立した生活を支援するための「察し」「気が利く」ロボットが求められている。
成果報告書ではその具体例として、
高いところにある棚の箱の上げ下ろし、天井の電灯の交換、重いゴミや新聞紙の外出し、電気器具の使い方説明など、
「わざわざ人を呼び出すほどではないが、何らかの困難の伴う作業」
をロボットができることをあげている。
つまり「気兼ねなく頼める」ロボット。
子供や他人になど迷惑をかけたくない、自立した老後を過ごしたい。
誰もが願うそんな生活ができるのであれば、100万円のロボットの出費など安いものだろう。
クルマを売って、ロボットを買う。そんな高齢者も多くなるかもしれない。
そうでなければ、現在大半の人がロボット利用で考える※「現実価格」から、なかなか抜け出せないのではと思う。
<つづく>
※「生活の中でのロボット利用について」のアンケート結果によれば、半数以上の人が妥当として挙げている金額。
ロボット購入、10万円〜20万円。
レンタル利用、時間1000円。
<つづき>
現場で30年の使用実績があり、6000億円の市場規模がある産業用ロボット。
その次世代型産業用ロボットが目指す方向性は、大きくわけて2つ。
ひとつは、自動車生産に代表される組立て作業の完全無人ロボット化。
もうひとつは、人とロボットとの作業分担又は協調作業。
どちらもロボットによるセル生産を念頭に置いている。
セル生産とは、一人で全部あるいはほとんどすべてを作り上げるやり方で、現在は多能工が行っている作業を、ロボットが長時間連続で行うことを想定している。
今後、組立て部品の移動や移載、柔軟物のハンドリング、人の作業支援などをロボットが単独で、又は人間と協調して行えるようになれば、
自動車のような大工場だけでなく、中小の工場でも幅広く活用することができ、産業界の競争力をより高めるられると期待されている。
また、安全基準さえまだ定まっていないサービスロボットを考えるとき、
ロボットセル開発の意義はとても大きいと思われる。
?現場で30年使用されてきた実績がベースにあること
?工場内という隔離されたスペースでの使用(基本的に関係者のみ)
?プロ作業員との協調作業(扱いに慣れない素人ではない)
?二足歩行である必要性が無い(床が平ら)
?ナビゲーション、ユーザインターフェース、環境とのインタラクションなど機能強化
?企業間取引(B to B)であること(コンシューマ向けではない)
?使い勝手を試すことで、サービスロボットへの応用
他にもメリットはあるでしょうし、また逆に教示やコストなど、いろいろ問題点もあるかとは思うが、
サービスロボットのブレークスルーにとって、
この次世代型産業用ロボットの普及はとても大きなカギを握っていると思う。
<つづく>
◎参考
現在、産業用ロボットの平均故障間隔は、2万時間。
一日20時間動かして、3年以上も壊れない計算。
これは、液晶テレビのバックライト寿命(約7年)や自動車の走行距離
(5年10万キロ)に相当(稼働時間比較)。
しかもロボットは1台3〜10本の腕を使って休まず働くことができるため、
成果報告書では、
今後10年で、100万台のロボットセルの導入を提案している。
<つづき>
「ロボット技術戦略マップ2006」のポイントは2つ。
ひとつは、
生活支援分野に限定していた調査を、製造技術、極限作業(原子力、災害など)、ロボット以外の製品分野(自動車、住宅など)にも拡げた点。
ロボットの適応分野の拡大をめざしている。
もうひとつは、
将来、必要とされるロボットシステムは何かを明らかにするため、ミッション指向の取り込みをベースにしたこと。
ミッション指向とは、
「真剣にロボットの導入を検討している具体的なニーズを持つユーザから情報をとり、それを解決するための技術を明白にする」こと。
技術のための技術ではなく、ちゃんと市場を意識していきましょうよ。
助成金は出しました、作ってもみました、でも誰も使いません、だから製品にもなりません。そんなことはもうやめましょうよということ。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は、このロボット技術戦略マップを踏まえ、
将来の市場ニーズ及び社会ニーズが高いと考えられる
「製造技術分野」、「生活支援分野」、「極限作業分野」で、
具体的な用途を行うロボットの技術開発を支援する
「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」を今年度から5年間かけて実施。
応募申請された43件の中から委託先17件を決定している。
初年度の事業規模は10億7800万円。
ちなみに3年後に中間評価を行い、もっとも成果の上がった開発者だけを引き続き重点支援するステージゲート制を導入している。
ふるい落とされた委託先は助成金を返金する、くらいの気持ちでなんとしても市場ニーズを満たすロボットの技術開発に取り組んでほしいと思う。
<つづく>