(つづき)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会と公開シンポジウムが行われた。
その中であきらかになったこと。
(2)原発事故での活動
これまでに投入されたロボット(無人機含む)
4月6日
無人化施工機械 バックホウ、クローラダンプなど4台(総数17台)
大成建設、鹿島建設、清水建設JV
4月10日
小型無人ヘリコプター 1台
T-Hawk (米ハニーウェル社)
4月17日、18日(4月26日、5月3日にも投入)
モニタリングロボット 2台
Packbot (米アイロボット社)
Q.何故もっと早くロボットを投入出来なかったのか
・安易に導入し、放射線でロボットが故障すれば、その後の作業の妨げとなり、全体の作業が遅れる。
・瓦礫が散乱している。
・無線電波が届かない。放射線が外気に出ないよう、建物内が入りくんだ作りになっている。
・ロボットを操作するための訓練が必要。
Q.何故アメリカのロボット(Packbot)が最初に使われたのか
・行うミッションでどれが一番最適なロボットか検討した結果、米軍に3000台が配備され、実績のあるPackbotが選ばれた。また、オバマ大統領の強い意向も反映されたのではないか。
Q.何故過去の原子力ロボット関連プロジェクトで開発したロボットを使わないのか
・点検・メンテナンスロボットとして開発された専用機であり、災害対策などさまざまな状況に対応できる汎用的機能は持っていない。
・当時は実用機としてのニーズがなかったため、要素技術として開発。プラントが故障しなければ、ロボットは必要ない。
・維持、運用するプロジェクトまで進まなかった(費用がでなかった)。
(つづく)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会と公開シンポジウムが行われた。
その中であきらかになったこと。
(1)震災での活動
国際レスキューシステム研究機構(IRS)のロボット研究者たちの対応と行動は、素早かった。
震災当日(3月11日)、アメリカのCRASAR( Center of Robot-Assisted Search and Rescue災害対応訓練所)でレスキューロボット「Quince」の実証試験を行っていた田所会長は、震災の報を聞くと直ちにCRASARに出動を要請。
翌12日には、テキサスA&M大学のRobin Murphy(ロビン・マーフィー)教授(9.11などの災害現場にロボットを出動させた実績あり)に支援の意向を知らせた。
日本に急ぎ戻り、13日に仙台市消防局に「能動スコープカメラ」の適用を申し込み、14日には東北経済産業局、宮城県、仙台市に適用可能なロボットのリストを配布。「Quince」をスタンバイした。
15日から19日にかけては久慈市や八戸港、鹿島コンビナートなどでニーズ調査も実施している。
しかし、自治体から倒壊家屋への支援要請は、なかった。
その理由として、
・阪神淡路大震災と違い、建物崩壊で亡くなった人が少なかった。
・津波で取り残された人を助け出すことが優先された。
・津波による被害は大規模かつ広範囲で自治体もどこから探していいのかわからない状況だった。役場にも電話が通じず、ほとんどの人が被災者となり、対応できる職員も居なかった。
・被災現場へのアクセスが格段に悪かった、など。
その後、港の復旧にニーズがあることがわかり、4月19日から23日にかけて沿岸部の海中の遺体を捜索する水中ロボットによる調査を実施した。これは、自治体(宮城県三陸町の町長と岩手県災害対策本部)からの要請で行う初めてのケースとなった。
(つづく)
2011年4月のロボティック・ライフスタイルニュースをまとめて。。。
<ロボティック・カー>
・次世代テレマティクスの戦略的提携を発表 (トヨタ自動車、マイクロソフト)
<ロボティック システム>
・関東ロボットセンタを開設 (安川電機)
イベントレポート
「震災・原発でのロボット活動報告会」
昨年度、関わった神奈川県のロボット事業について。
ひとつは、「介護・医療分野ロボット普及推進事業」。
これはHAL、パロ、眠りSCANなど4機種を県内の7施設に無料で貸与し、使ってもらい、その評価を行う「介護ロボット試験導入」と、県内830余りの介護保険3施設(特別養護老人ホーム、老人保健施設、有料老人ホームなど)へのアンケートと訪問ヒヤリングによる「介護施設からのニーズ調査」などからなり、ロボットを普及推進するための課題と今後取り組むべき方向性を明らかにしようとしたもの。
ロボット導入・利用について、施設側のニーズと具体的な意見をここまで明らかにした報告書は、これまで初めてだろう。
もうひとつは、「ロボット等新製品開拓事業」。
こちらは、国の雇用対策基金制度を活用して、3つのロボット等の開発を行ったもの。
高所作業用延伸アーム、上半身マネキンロボット、子供の成長記録(ライフログ)を自動記録する姿見などが開発された。
3月下旬にこれらの開発成果報告が予定されていたが、地震の影響で中止となり、4月25日のセミナーで一部展示される。
それと、やはり地震のため中止になってしまった、「移動ロボットによる実証実験」(川崎地下街「アゼリア」)
これはイベント広場内に小型の模擬店舗と通路をつくり、その中で、ロボットによる誘導案内やゲーム形式のデモンストレーションを実施しようとしたもの。
使用するロボットは、NEDOの「戦略的先端ロボット要素技術開発プロジェクト」で開発された「全方向移動自律搬送ロボット」(MKR-003)。
こちらのほうは、今年度あらためて実施する方向で検討中。
これだけ大きな出来事(大震災・原発事故)が起こると、誰もが自分で出来ることがあれば何かしたい、困っている人があれば手を差し伸べたいと思い、多くの方が積極的に行動を起こしている。
そんな中、山田洋次監督が新作映画『東京家族』の製作を延期し、2012年春の東京を舞台にした物語に脚本を見直すことが発表された。
延期した理由について監督は、「一年以上の歳月をかけて入念に準備を整え、間近なクランクインを控えてスタッフやキャストの気力が充実しきっていた時、3月11日の大災害が発生しました。このままそ知らぬ顔で既に完成している脚本に従って撮影していいのだろうか。いや、もしかして3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか。僕は何日も悩み、会社ともくり返し相談した結果、それこそ苦渋の選択をしました。撮影を中断して今年の終わりまでにこの国の様子を見よう、その時点で脚本を全面的に見直した上で戦後最大の災害を経た東京、つまり2012年の春の東京を舞台にした物語をこそ描くべきだ」と。
山田監督は1970年に長崎県の小さな島から北海道の開拓村まで旅する一家の姿を見つめた映画『家族』の中で、日本万国博覧会開催中の大阪や公害に悩む東京など、高度経済成長期の変わりゆく「今」の日本を描いた。
その山田監督が「3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか」「撮影を中断して今年の終わりまでにこの国の様子を見よう」と決断したのには共感するし、監督が2012年春の東京をどのように描くか今から期待したいと思った。
同じ日、 日本学術会議の東日本大震災対策委員会は、福島第一原子力発電所の事故対策にロボット技術を活用すべき、との提言(※)を公表した。
現場各所の放射線量監視、画像撮影、試料採取、また、廃炉作業の一部完全自動化、新規ロボットや新運用システムの開発、自動移動ロボットによる連続巡回モニタリングと自立作業ロボットによる除染作業の一部完全自動化、そして災害対策支援ロボットを維持・保守・改良し運用訓練を行う恒常的な組織・システムの構築 などなど。
まったくタイムリー、ではある。
原発廃炉までには少なくとも10年、汚染除去後の更地まで30〜100年もかかるといわれている福島第一原発の事故処理。提言通りにいけば、ロボット関係者は数十年、食いっぱくれがない、ウマすぎる商売になる。しかし、この危急時にこれまで開発してきた日本のロボットは全く役に立たなかった。多額のプロジェクト予算で開発だけを繰り返し、「絵」になることでマスコミ受けだけは良く、本気で普及・運用を怠ってきたツケがあからさまになっていながら、その反省も、総括もなく、混乱に乗じて、カネずるを引っ張りこもうという魂胆が見え隠れしていると感じる。
3月11日以前と以後も、ロボット関係者の心のありかたは同じなのか