昨夏、トヨタオートサロン・アムラックスで行われた「ロボット大博覧会」。
トヨタの最新型のクルマの周辺で、家庭用ロボットが展示されていたが、否応なしにクルマとの比較になり、ロボットがまるで小さなゲージに入れられた珍奇な動物たちのように見えた。
ロボットのイベントでいつも思うことは、ロボットの動作環境を考慮せずに、単体でポツンと出品するケースが多いということ。
広いイベント会場では、ロボットにさまざまなセンサーがついているとしても、ロボット本来の力が発揮できるとは思えない。
幼い子供を見知らぬ場所に置き去りにしているようで、居たたまれない気持ちになる。
ロボットをイベントに出すのであれば、もっと動作環境に配慮すべきだ。
そうでなければ、何度やってもまともな返答や動きができず、まだロボットはこんなものか、と思われるだけ。
多くの人に見せるからにはちゃんとしたものを出す、というトヨタやホンダのロボットイベントへの姿勢を、もっと見習うべきでだろう。
<つづき>
昨年、科学に携わる専門家と一般市民との交流を促すイベント「サイエンスアゴラ」が開催された。
「アゴラ」とは、ギリシャ語で人々が自由に集い議論する「広場」の意。
3日間の開催期間中、お台場の日本科学未来館を中心に多彩なプログラムが組まれ、子供の理科離れや大人の科学への無関心、世界的な知の競争激化など、科学を取り巻く状況が劇的に変化している今、時流にかなったよいイベントだったと思う。
最終日のシンポジウムでは、主催者から今回の反省点として一般の方の参加が少なかったこと、サイエンスについて活発な議論が交わされるまでにはならなかったこと、などが挙げられていた。
科学技術は一般的に難しい印象があるだけに、一発で大きなリターンを望むのではなく、さまざまな場所でさまざまな取り組みを地道に続けていくしか、近道はない。
それにしてもなんでお台場なのか。
きれいで整然とした空間ではあるが、人の息吹きや猥雑なエネルギーの感じられない埋立地で、「自由に集い議論する」という雰囲気になるとは思えない。
ロボットに場所を取られたためではないだろうが、今年のサイエンスアゴラも同じお台場で開催される。
芸術の秋、多くの人でにぎわう国立科学博物館を中心にした上野でなぜ行わないのだろう。
「サイエンス アゴラ」に参加した人たちが、紅葉した公園で、あるいは甘味処で、あるいは老舗のとんかつ屋で、サイエンスを大いに議論する姿を見たい。
映画「バブルへGO!」では、バブル崩壊後17年のわかりやすい象徴として、ケータイが小道具として活躍する。
昨年、6年振りにケータイを換えた。
買い替えをしなかった理由は、これまで使っていたケータイに愛着があったのと、特に不便を感じなかったからだが、
さすがに6年間の進展ぶりはすさまじく、GPS、ラジオ、動画、添付ファイル閲覧、フルブラウザ、おサイフケータイ、ワンセグなど、新機種はまったく「べつもの」、旧機と比べれば、それはまるで魔法の機械のようだ。
以前、取材させていただいた千葉工大の中野栄二先生の言葉をあらためて思い出す。
「生まれた子供が、いきなり目にするのは母親が操作する超ハイテク機器の携帯電話である。
ハイテク機器に囲まれて育った若者たちは、これからなにをやっていくかを考えたとき、『自分のできることなどまだあるのか、もうなにもないのではないか』と、ある種の絶望感にかられる。
ハイテク機器に取り囲まれて育つと、モノの仕組みを見てやろう、技術を極めてやろうという感覚は起こらないだろうし、育つ環境でもない。
いまの子供たちはある意味で大変な時代に生きている」
<つづく>
<つづく>
現在、日本をはじめ世界各国で科学技術やイノベーションをめぐる政策がはじまっており、研究開発への投資が拡大している。
日本も今後5年間で総額25兆円を費やす計画だ。
そこで肝心の「イノベーション」の定義だが、
ラテン語のinnovare(新たにする)が語源。
単なる「技術革新」という狭義の概念ではなく、
社会のシステムや制度を含めて新たな価値を生み出し、社会的に大きな変化を起こすこと。
昨年、安倍前内閣が進める「イノベーション25」の意味合いについて、安倍内閣特別顧問だった黒川清氏が産官学連携サミットで明確に答えている。
『20年先の細かな科学技術を予測することにはあまり意味がない。
「イノベーション25」とは、技術革新のことだけでなく、イノベーションを行う人材、システム、風土を作ること。
つまりイノベーション創出のカルチャーを作っていくことが大事である』と。
つまり、技術だけが新しくなるのではなく、人のこころの内も変わらなければならないわけで、
イノベーションを興す文化を育む必要があるということ。
人のIn(内部を) + novare(変化させる)、難問だ。
<つづき>
現在早稲田大学には、人文、社会、情報、科学などのプロジェクト研究所が約140ある。(有名なヒューマノイド研究所もそのひとつ)
それらプロジェクト研究所を統括しているのが「総合研究機構」。
昨年、その研究成果報告会が行われた。
テーマは、ロボットに関わる医療、福祉、安全、倫理について。
この中で、これからの医療ロボットは、患者や医師の負担を最小限にする低侵襲化がますます進み、
小型で知的なロボットによるカテーテルのような「非侵襲治療」になると指摘。
脳腫瘍手術も「歯医者の虫歯治療」のようなイメージだそうだ。
早稲田大学は高度な先端医療を発展させるため、東京女子医科大学との医工連携を進めている。
<つづく>