昨年度に引き続き行われる神奈川県の「介護ロボット普及推進事業」。その介護施設向けの「事業説明会」が、来週横浜で開催された。
今年度、介護施設に無料貸与されるのは、7機種。そのうち、「HAL」と「パロ」は、5ヵ月間貸与され、他の5機種(「ヒューマニー」(排泄介助)や「リラウェーブ」(床ずれ予防)など)については、1〜3ヶ月間貸与されることになっている。
昨年度が、ハード(ロボット)の貸出しとその評価、及び介護現場の意識調査が中心だったのに対し、今年度はハードの貸出しを増やす(3機種から5機種に)一方、ロボット導入のためのソフト面の強化が中心となる。具体的には、ロボット導入のためのガイドラインや研修ツールの作成、ロボットに関する正しい知識を提供する仕組みづくりとロボット導入に興味を示した施設への、より詳細なヒヤリングなど。
東京電力福島第一原発事故では、国民からの強い期待にも関わらず、これまでなんの働きもできなかった日本のロボット。日本はロボット先進国だと思いこんでいた多くの人々の気持ちを裏切り、深く落胆させてしまった。(災害対応支援ロボット「Quince」が現場投入されたが、まったく遅きに失した感は否めない)
どうすれば、本当にロボットを社会に導入していくことができるのか。
ハードから、ソフトへ。
地に足の着いた、地道な取り組みをしていかなければならない。
2011年5月のロボティック・ライフスタイルニュースをまとめて。。。
<ロボティック・カー>
・拡張現実スカウターモードを搭載した新「サイバーナビ」を発売(パイオニア)
<ロボティック システム>
・統合型 拡張現実感 技術 「SmartAR」を開発(ソニー)
・段ボール梱包を開封する自動開梱ロボットを開発(安川電機と鹿島建設)
<ロボティック ミッション>
・無人探査機「オシリス・レックス」を2016年に打ち上げ(米航空宇宙局)
イベントレポート
5.02公開シンポジウム「震災復興にむけて ロボット技術のいま」
ネットワークロボットフォーラム(NRF)の土井標準分科会長の報告(※1)によると、位置情報(OMG、ISO)、空間情報(OGC)、ネットワークロボットプラットフォーム(ITU-T)、対話サービス(OMG)などのロボットに関わる標準化団体で、韓国や中国が発言権を強めており、日本の存在感が薄くなりつつあるという。
これまで日本もロボットの国際標準化策定には積極的に関わり、日本主導で標準内容を策定する意向で取り組んでいるが、震災の影響で国の優先順位が震災復興に向けられており、これまで標準化策定に深く関わってきた産業技術総合研究所や、大手民間企業の担当者が標準化の国際会議に欠席することが多くなっているようだ。
その反面、韓国は成果主義を導入して担当係官を増強し、自国優位に標準化を策定しようとしており、また、高齢者・障害者対応ロボットシステムや高度教育・エンターテインメントロボットの開発・普及を国家科学技術戦略に掲げる中国も標準化策定に積極的に関わり出してきている。
2012年の夏にもPersonal Care Robotの国際的な安全規格(※2)が制定される見通しで、ロボットの標準化は、今まさに正念場。
クルマ(モビリティ)のロボット化やスマートシティでのロボット技術の推進など、ロボットの標準化は、医療、福祉、生活、インフラなど広範囲にわたり、さまざまな省庁が横断的にからむだけに、『サービスという視点が欠かせない』(萩田技術部会長)のだが、震災対応に追われている間に「漁夫の利」とされることのないよう、国は、ロボットの標準化を必ず勝ちとるという「気構え」と「迫力ある」姿勢を具体的に見せてほしいと思う。
(※1) NRF標準分科会 2010年度報告(2011.5.13) ( )内は標準化団体の略称
(※2)ISO 13482 Robots and robotic devices – Safety requirements – Non-medical personal care robot
(つづき)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会と公開シンポジウムが行われた。
その中であきらかになったこと。
(4)日本の災害対策ロボットの課題と中長期的に果たす役割
・災害対策技術を開発し、それを国家規模で運用するためには消防や自衛隊との連携が必要である。
・ロボットの評価基準ができれば自治体への導入も進むのではないか。
・フランスでは事故が起こった場合に備え、法律に基づいてロボットの開発、操縦者の養成・育成、事故訓練などをする組織(Group Intra※)がある。日本にも同様の組織を作る必要がある。
・災害対策ロボットを国家規模で運用する組織を作るならば、防衛と災害対策を自衛隊の任務と位置づけ、その上で災害分野に限った部門と大学等の研究機関の連携を築くように検討がなされるべきである。
・長期的な震災の復興にむけてロボット技術だけでなく関連する技術について広く知恵を集め、そこから適時に、適した技術、適した運用を提案してゆくシステムの枠組みを作る必要がある。
ロボット研究者は自らよく動き、本当によくやっていると思うが、災害対策ロボットは「即、役立つこと」が必須に求められる分野。
個々人で動くことの限界もあきらかになっており、東京大学の中村氏が指摘しているように、「ロボット技術に限らず科学技術の突破力を引き出すことのできる社会のシステムを作る」必要性を感じた。
※Group Intra
フランスの電力庁、原子力庁、核燃料公社の共同出資で1988年に設立。
事故が起こった場合、24時間以内に専門職員と設備を派遣、輸送。施設専属のロボットオペレーターが想定される事故に対処できるよう訓練を積んでいる。遠隔操作ロボットは発電施設の運転室内操作盤の操作や配管の脱着などの工事作業、屋外の土木工事対応など、想定される緊急事態に備えている。
(つづき)
東日本大震災と福島第一原子力発電所の事故におけるロボットの活用について、その活動報告会と公開シンポジウムが行わた。
その中であきらかになったこと。
(3)原発事故で導入する日本のロボットの動向
A.どんなロボットが検討されているのか
・レスキューロボット「Quince」、「T-53援竜」から、メンタルコミットメントロボット「パロ」まで、様々なロボットが候補に挙がっている。
B.いつ頃投入される見込みか
・現場の状況がどんどん変わっており、優先順位がどうなっていくかわからないため、どのロボットがいつ投入されるのか、わからない。
・候補に挙がっている中ではQuinceが最右翼だと思うが、その投入予定はわからない。
・投入された場合は、本格的な操作訓練に3日、その他ミッションに合わせた訓練が数日必要になる。
C.Quinceの優れたところはどこか、また使用用途はなにか
・高い運動性能。階段を登る事が出来、特に瓦礫走破が巧み。
・情報収集がメイン。屋外の線量率測定、原子炉建屋内の状況調査と軽作業。
・電波の関係もあり、2台1組での投入が検討されている。既に福島第一原発と構造の同じ浜岡原発でシミュレーションを行っている。
D.投入後、Quinceは繰り返し使用できるのか
・除染して繰り返し使いたいと考えているが、線量が強い場合は使い切って捨てることになる。
(つづく)