昨年、テムザックのレスキューロボット「T―53援竜」が、新潟県中越沖地震で倒壊した倉庫のがれきを除去する様子がTVニュースで流れた。
T―53援竜は車両ナンバーを取得し、一般道路を走行することで被災地に駆けつけ、被災地で活躍する初めてのロボットとなった。
長年、多額の研究費をかけながらレスキューロボットの実用化は一向に進んでいない。
今回はデモンストレーションとしての意味合いが強いとはいえ、
こうした事例を積み重ねることで、現場での認知や必要性が高まってくるかもしれない。
しかし、実際問題として、各地の消防署がいつ起きるかわからない災害に備え、高額なレスキューロボットを購入するというのは、費用対効果の面から難しい。
そのため、平時においては、床下点検やシロアリ駆除などに使用することが進められており、製品化もされている。
地震は国の災難。
レスキューロボットを国土防衛という見地から、あるいはテロ対策支援システム「装備品」として、防衛予算で計画的に整備するという話には、ならないのでだろうか。
(つづき)
「ヒトと機械のあいだ」(岩波書店)で廣瀬通孝氏は、バリアフリー技術 = 装着型の機器によって、障害を補完する技術、について言及している。
人間はある機能が失われたとき、それをほかの機能が補うような形で変化する(適応)という。
例えば視覚を失うと、音だけでそうとう微妙なことを知覚できるようになり、鋭い人だと4m離れたところからでも6cmくらいの物体を認識することができるそうだ。
廣瀬氏は、バリア(障害)を持つ人々は、何らかの部分で健常者とは違った特性を有するという観点から、「バリアは個性」であるとし、バリアがあるからこそ見えてくる「新しい世界」があると述べている。
それゆえ、機械を装着することで、健常者を上回る能力を身につける可能性について、
「技術への参入障壁が健常者より小さいことは大きなアドバンテージである」とし、発展途上国が新規技術を導入することでハンデキャップを一気にプラスに転じるリープフロッギング(Leap flogging 蛙とび)現象も可能ではないか。
そして、「全ての人々が新しい技術に対して洗練されているはずがないため、新しい技術が世の中に広く行き渡るためには、はじめの段階に先端的なユーザが必要であり、
拡張型の機械の世界の最も先端的なユーザのある部分は、バリアを持つ人々が担っている」として、
個性を持つ人々に単一の規格を押し付けることのない「Intimate※な技術の活用」の大切さを指摘している。
※Intimate 「内心の、個人的な」の意。
メガネや入れ歯が個人だけのものであり、他人との共用がナンセンスであるように、今後コンピュータも個人と一体化していくというラップトップ型パーソナル・コンピュータの発案者、Alan Kayの言葉から。
参考 : 「ヒトと機械のあいだ」(岩波書店) 廣瀬通孝編
昨年、埼玉で開催された「次世代ロボットセミナー」。
立命館大学理工学部の手嶋教之教授は、福祉・介護ロボットを開発する上での問題点を指摘していた。
簡単に要約すると、
現代の福祉のキーワードは、自分の生活は自分で決める自立・社会参加であり、国家経済が求めているのも自立支援ロボットである。
研究者はついつい機能に注目するが、福祉の目的は失われた機能の回復ではない。
自立支援ロボットの開発にはユーザニーズの把握が必要。そのためにはユーザを開発チームに入れ、特定ユーザのニーズを一般化すること。
ユーザもまったく存在しないものについて訊ねられてもきちんと答えられないので、すでに実用化されている福祉・介護ロボットを分析することが大切。
(オランダ製の自立支援ロボット「MANUS」のユーザが、かゆいところを掻くためにロボットを使っている例を挙げた)
そしてロボットの安全対策として、ロボットがなにかに触れたら、自動的に反対方向へ手を引っ込める反射機構や過大な力が加わると大きく変形するロボットアームなど、フェルセーフな力センサの開発が必要である。
(つづく)
以前、新江ノ島水族館を訪れ、バックヤード(水槽の裏側)を見学させてもらった。
水槽の裏側の狭い通路には幾重ものパイプやケーブルが走り、足組みが作られた水槽上部にはいくつものライトがぶら下がり、
海洋生物の飼育、水槽の内側につくコケ取り、冷たい水槽の掃除など、ほとんどの作業は人手で行われていた。
昨年、川崎で行われたロボットビジネス協議会のセミナーで、新江ノ島水族館支配人の堀一久氏は、水族館で求められているロボットシステムの活用として以下の点を挙げました。
・ エサ、薬添加機能
・ 水温調節機能
・ 水質殺菌機能
・ 水質ろ過循環機能
・ 飼育水浄化機能(取水、排水)
・ 証明設備、受変電設備保守機能
・ 苔取り
上記の「課題」をロボット技術(RT)で「解決」することが求められているが、
問題はコストと合理性。
ロボットシステムとして稼動した場合、現在の人件費に比べて果たして高いのか、安いのか、手間がかかるのか、かからないのか。
ビジネスとしての成功が真剣に問われているが、その後、新たな動きはない。
NASAはロシア製の宇宙トイレシステムを1900万ドル(約22億8000万円)で購入するようだ。
ロシア製の宇宙トイレは排泄物から水を再生することができ、下水処理装置とほぼ同じ機能を備えている。
昨年開催された「第2回宇宙ロボットフォーラム」。
「国際宇宙ステーションを利用したロボット関連研究の地域連携」の具体例として、中部経済局とロボット関連企業で計画している「宇宙トイレ」が紹介された。
そこで開発された「宇宙トイレ」を地上での介護・福祉分野に、「人間の尊厳を保持する排泄処理システム」として応用できないか、今後検討していくようだ。
将来「宇宙トイレ」が、NASAをはじめ、世界各国の有人ロケットに標準装備されるようになり、しかも介護・福祉分野に活用されればすばらしいことと思うが、
これまでも宇宙で開発された素材・要素技術をスピンアウトして新たな収入源にしようとしてきたが、いまひとつ効果が上がっていない。
よい方向に動きだすといいが。