昨年開催された東京モーターショーの国産車ブースでは、連日派手なショーステージが繰り返され、大勢の来場者を楽しませました。
対象的なのはフェラーリ、マセラッティなどの高級車メーカーのブース。
45cm高のステージ上に3台のフェラーリを置き、
一般来場者は遠巻きにそれらの車を眺めるだけだが、顧客やお得意様、特に見込み客は個別にステージ上に案内され、間近でフェラーリを見ることができる。
見込み客は神妙な面持ちでフェラーリのハンドルを握ったり、インテリアの感触や計器類を確かめたり、スタッフの説明も上の空といった様子。
フェラーリのドアが開き、インテリア内部が見られるようになると多くのカメラのフラッシュがたかれる。
見込み客からすれば、大勢の観客のあこがれの視線を全身に浴び、まるで映画俳優になったような心持だろうう。
自分ひとりだけが「私のフェラーリ」と対面できる。
注目を浴び、優越感に浸り、高揚して頭の中が真っ白になった見込み客は、ただただフェラーリが欲しい、自分だけのものにしたいと思うに違いない。
フェラーリ、マセラッティの日本総代理店であり、ロールス・ロイス、ベントレーの正規代理店のコーンズは、エンターテイメント性を強める東京モーターショーにあっても、高級車を売るための自分たちのスタイルを貫き、実利を挙げることを忘れていない。
いつか、富裕層向けロボットが発売される際には、見習うべき点が多い。
ASIMOのショーは、やるからにはちゃんとしたものを出すというホンダの社としての強い意志が感じられ、毎回楽しいショーになっている。
昨年の大ロボット博でのショーも、ASIMOがいる家族の近未来のライフスタイルを実演と映像を使ってわかりやすく紹介したもので、
ASIMOがボールを蹴ったり、走ったりするたびに、観客から歓声や拍手が沸き起こっていた。
ASIMOが実際の家庭に入るまでにはまだまだ長い道のりがあり、そう簡単にはいかなことは、皆わかっている。
それでもいつの間にかASIMOに感情移入し、ASIMOの成長をあたたかく見守っている。
観客は未来のストーリーをASIMOに感じているのだろう。
ホンダはこのショーを約100日間の実証実験としてとらえ、万全の態勢で臨んだ。
ちなみに、昨年の東京モーターショーでホンダが出品した「PUYO」は、やわらかい素材のシリコンボディでできており、いずれASIMOにも使われるかもしれない。
昨年、東京モーターショーと大ロボット博がほぼ同時期に開催された。
エンターテイメント性や目新しさから、マスコミはコンセプトカーやプロトタイプロボットを大きく取り上げ、「夢を見たい」人々もそれらに注目する。
東京モーターショーの出品車数は、約540台。
そのうちコンセプトカーは5%程度。
つまり、出品車の95%は売っている(もしくは販売予定のある)クルマ。
大ロボット博の出品ロボット数は、約100台。
そのうち市販されているロボットは5%程度。
つまり、出品ロボットの95%は売られていない(もしくは販売予定のない)ロボット。
今後、クルマのロボット化が進んでもショーに出品された車の95%が販売車という数値に変わりはないだろう。
ロボットの場合はどうか。
ロボットのプロトタイプ率95%という数値が下がらなければ、市場拡大など「夢」のまた「夢」だ。
(つづく)
昨年、都営地下鉄大江戸線で停電が発生してトンネル内で電車が立往生したトラブルは、変電所での保守点検の後に送電スイッチを入れ忘れた人為的ミスが原因だった。
航空機による人為的ミス(ヒューマンエラー)も多発している。(※)
国土交通省は大惨事につながりかねない重大トラブルとして、管制官と機長の交信用語を簡素化し、混雑時間帯に管制官の支援要員を設けるなどの再発防止策を検討している。
またAP通信によると、
NASAが商用旅客機のパイロット2万4000名を対象に空の安全に関するアンケートを実施したところ、多くのパイロットがニアミスの体験があると回答。
これらの数値が余りにも多かったため、NASAは調査結果を公表した場合にアメリカの航空旅客輸送の信頼性を損なうと判断し、調査結果をこれまで伏せていたという。
ロボットが家庭に導入される際に暴発、暴動しないことが安全面での絶対条件になっているが、
実際は人為的なミスによる事故のほうが多いのではないかとも言われている。
テクノロジーの進展とヒューマンエラーの関係は、切りたくても切れない関係。
今後も対で考えていく必要がある。
(※)
2007年
6月 離陸直前のスカイマーク機の前を着陸後の全日空機が横断。(新千歳空港)
9月 日航機が管制官の許可なしに滑走路を横断。(伊丹空港)
10月 エア・カナダ機が、管制官の許可を得ずに滑走路に進入し、降下中だった日本航空機が、再上昇して着陸をやり直し。(関西空港)
10月 全日空機が管制官の許可を出した滑走路とは別の滑走路に着陸。(伊丹空港)
2008年
2月 日航機が管制官の離陸待機を許可と勘違いして滑走路に進入。滑走路上にいた別の航空機に近接。(新千歳空港)
これらの原因は、管制官の不注意又は管制官と機長との意思疎通が不十分だったことによる人為的ミスとされる。
NECソフトウェア東北が、パーソナルロボット「PaPeRo」のアイデアを競うイベントを実施している。
家庭内にどうやってロボットを導入し、新たな市場を作っていくのか。
現在、それができないのは、
キラーアプリケーションがまだないからなのか、
販売価格が高い、費用対効果が伴わないからなのか、
現場ニーズに技術レベルが追いついていないためなのか、
充分な安全性が確保されていないからなのか、
それとも一般ユーザーのロボットに対する期待が高すぎるためなのか、
そもそも家庭内にロボットを必要としているのか・・・
多くのロボット関係者のさまざまな努力にも関わらず、なかなかその「解」が見出せずにいる。
NECのイベントの募集内容は、2010年の「PaPeRo」を想定し、
「どのような企業が、どのような人向けに、どのようなシーンにおいて、どのようなサービスを提供すると
『PaPeRo』が役に立つことができるのか」
というロボット関係者誰もが知りたいストレートなもの。
そして、そのアイデアは、
「現在もしくは近い将来に利用可能な技術の利用を想定したアイデア」であり、
「いつ実現するかわからない夢のような技術を前提にしたアイデアは対象外」としている。
なりふりかまわず、と言った感じだが、3月に発表される審査結果に注目したい。