ドイツ西部のボームテという街の中心部で、交通の安全性を高めるために、昨年9月からすべての信号と標識を取り外す試みをはじめた。
これは、信号や標識がないほうが人々も慎重になり、危険を避けようとする心理が働くため、結果として事故が少なくなるという「共有空間」(Shared Space)という考えに基づいている。
ITS(高度道路交通システム)や、危険回避などのクルマのロボット化は、交通事故を減らし、安全な社会を実現するために有効だが、それはあくまで従来の道路インフラの高度利用とクルマの乗員保護が中心。
今後のパーソナルモビリティの進展や将来のロボットの社会参加を考えた場合、人と車を明確に区分けするというこれまでの道路インフラの延長ではなく、人とロボットが共存できる新たな発想のインフラ整備が必要になる。
ロボットにやさしい街づくりは、お年寄りや障害者にもやさしいユニバーサルデザインとなるはずなので、この「共有空間」という考え方は、ロボットと暮らす社会を実現するうえでのヒントになるかもしれない。
日本でもロボット特区で実施してみたらどうだろう。
明治大学ラグビー部の合言葉は、「前へ」。
重量フォワードがまっすぐ前へ突き進むそのラグビースタイルは、武骨な力強さが魅力だ。
Boston Dynamics社の「RHex」は、ジャングル、山道、階段、湿地、水中、鉄道の線路、急な斜面など、どんなところにでも突き進むタフなロボット。
がむしゃらに「前へ、前へ」と進むその姿には、すがすがしささえ感じる。
Boston Dynamics社はこれまでも戦地や惑星探査用として、「BigDog」や「RiSE」など、一度見たら忘れられないロボットを開発している。
多機能で見た目も美しいロボットも大切だが、単純で武骨だけど、とにかくタフなロボットもまた、魅力的だ。
(つづき)
ロボットが社会の一員として日常的に受け入れられていくにはロボットはどうあるべきか。
石黒氏はコミュニケーションロボット「Robovie」を使って、小学校、科学館、駅、研究所内などの実社会で実証実験を行った。
小学校では、ICタグをつけた子供とロボビーが関わることで、誰がクラスの中心人物になっていて、誰がクラスで孤立しているかを把握すること※で、人間の社会関係を基にロボットが複数の人間と関わることのできる可能性を、
科学館では、複数の半自律のロボットをひとりの人間が遠隔で操作するプログラミングセンター実現の可能性を、
また、駅内では、2台のロボットが対話することで、1台のロボットより正確に情報を伝えるパッシブ(受動的)ソーシャルな関係の可能性を、取り上げている。
そして、これらの実験結果のひとつの答えとして、役割をもったロボットの重要性を挙げている。
「ロボットが役割を持って、いったん社会の一員であると認められると、そこからロボットの可能性は飛躍的に広がっていく。
人間のさまざまな社会的役割を担うことができるようになるのである」
その一例として、なにか仕事をしながらも、ときおりうわさ話や雑談をするロボットを提案している。
たわいのない雑談が人間関係を円滑にし、社会に安心感をもたらすことで、自然とセキュリティが保たれるのではないか。
そして、ロボットが人と協調し、他人の仕事を阻害しないためにも、周りの状況を見ながら人間の行動を優先させる「遠慮できるロボット」の必要性を述べている。
KYR = Kuuki YomeRu
※ソシオグラム=人間関係がどのようになりたっているかをグラフ化したもの
ロボット研究者は日本に約4000人。全世界では1万人を越える位はいるのだろうか。
それぞれの研究者が、それぞれの考え、立場でロボットの研究をしている。
当然、ロボットについてはいろいろな意見、考えがある。
ジェミノイドの開発で有名な大阪大学大学院の石黒浩教授。
その石黒氏の著書「アンドロイドサイエンス」(毎日コミュニケーションズ刊)には、絵画への興味から画像認識の研究世界に入り、やがて人と関わるロボットの開発を経て、人間らしさの研究、人間の存在としてのロボット(ジェミノイド)に至る経緯が、率直な言葉で語られている。
ロボット研究者としての石黒氏の興味は、ロボットを通して人間を知ること。
人間とはなにか、人間らしさとはなにか。
それは、自己とは何か、心と体は分離できるかなど、哲学の世界に通じていく。
著書の中で、太文字で簡潔に語られる言葉がある。
研究、実証を経験した上での言葉だけに、それは箴言のようでもある。
・ロボットは人間を映し出す鏡である。
・人間は人間が何かであるかを知るために生きている。
・人の興味は物事の起源か人そのもののどちらかである。
・人間は対話相手を常に擬人化する。
・人間型ロボットは機械として認識されるがゆえに、他人より話やすい対話相手になる。
・・・
そして、SFの世界で描かれた出来事についても、明快だ。
・人間は創造したものをいつかは必ず具現化する。
(つづく)
昨年、日本とアメリカで、軍事に係わるイベントがそれぞれ行われた。
アメリカではDARPA(米国国防総省高等研究計画局)主催による無人ロボットカーのレース「DARPAアーバン・チャレンジ」。
過去2回の砂漠地帯でのレースとは違い、今回は空軍基地跡に交差点や駐車場などを設定し、交通法規の遵守、有人運転車との混走など、実際の市街地を想定したルートで走行するというもの。
日本では、防衛庁技術研究本部主催の軍事技術に関する講演と展示会「防衛技術シンポジウム2007」が開催された。
特に展示セッションでは、「ガンダムの実現に向けて」と名づけられた「先進個人装備システム」が、インターネットなどで話題となり、多くの見学者が訪れていた。
一方は優勝賞金200万ドル(約2億3000万円)を賭けた真剣勝負。
イラクやアフガニスタンでの実戦配備を目的としたロボットテクノロジーの純粋な軍事利用だが、その先には当然自動車の自動運転への活用という大きな拡がりが想定されている。
片や「ガンダム」。
展示品には「先進個人装備システム」をはじめ、おもしろい技術がたくさん見られたが、自衛隊だけをユーザに想定しているため、非常に内向きでこじんまりとした印象で、アメリカとの意識の差を感じた。
そして、この他にも人知れず死蔵していく技術、アイディアがたくさんあるのではとも思った。