○2007年上半期 ロボット・トピックス
?安全
次世代ロボット安全性確保ガイドライン案
経済産業省は4月、次世代ロボットの安全性に関するはじめてのガイドライン案を発表し、パブリックコメントを募集した。
非製造分野におけるロボットの安全基準作りは、早急にロボット市場を立ち上げるためにも、また日本のロボットが世界の主導権を握るためにも大変重要なもの。今後の動向に注目。
?知能
a.次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト
19年度から19億円の予算でスタート。ロボット関連最後の大型プロジェクトとして、ロボットメーカーや大学研究者の「お金」に群がる浅ましい姿も散見される。
これにより本当に役立つロボット知能ソフトウェアプラットフォームが実現できるのか、しっかりとみていきたいと思う。
b.情報と行動を学習するロボット
情報通信研究機構は、対話と行動を学習するロボットの知能化技術の開発に世界で初めて成功。
これにより利用者の生活空間や習慣に応じたコミュニケーションが実現できるものと期待される。
?自動車標準ソフトウェア
トヨタは自動車搭載用の標準ソフトウェアを独自開発を発表。
路車間でさまざまな情報をやり取りして、未然に事故を防ぐ高度技術の実用化が期待されており、外部に委託したソフトウェアの不具合によって人身事故が発生した場合に今後責任の所在が問われかねない。
そのための自社開発ということだが、ソフトウェアをIT産業に握られ、主導権をとられたパソコンの二の舞にならないための手段でもあるだろう。当然、ロボットおや、である。
?柔軟な関節とやわらかい皮膚を持つロボット
科学技術振興機構は大阪大学と共同で、柔軟な関節(51カ所の可動部分に空気アクチュエータを使用)と柔らかな皮膚(シリコン製皮膚の下にある約200個の高感度触覚センサで全身の触覚を実現)を持つヒューマノイドロボット「Child-robot with Biomimetic Body (CB2)」を開発。
ロボット発達のメカニズムと人間社会に適応するロボットの実現が期待される。
○2007年下半期ロボット・トピックス
?産業用ロボットからサービスロボットへの鼓動
安川電機のMOTOMANシリーズや富士重工業の連結式医薬品容器交換ロボットに代表される、次世代サービスロボットが非製造業の生産現場に進出。
人と接する身近なサービスロボットへの展開を予感させる。
?ロボットの知能化開発の加速
今年度から「次世代ロボット知能化技術開発プロジェクト」(経済産業省)がスタート。情報通信機構の「ボディランゲージで自然に振舞うロボット」や、トヨタや富士通が理化学研究所と脳の研究を開始、またホンダが複数体のASIMOを協調動作できる知能の開発など、ロボットの知能化に関する動きが加速。
?顔画像認識の商品化
「FinePix」(富士フイルム)や「サイバーショット」(ソニー)のデジタルカメラに搭載され、一気に一般化した顔画像認識。
オムロンの「KAO Vision」が綜合警備保障の警備ロボットに搭載されたり、NECソフトの「Field Analyst」が新しい分析手法としてマーケティングに活用されるなど、応用範囲が拡大。
?ユーザ企業と二人三脚
富士重工業と住友商事がオフィスビルでの「エレベータ連動清掃ロボットシステム」を共同開発したことを筆頭に、富士通、富士通フロンテックとイオンが受付案内ロボット、安川電機、三井物産とホクショーが物流プロセスのロボット化、アスウェイと大阪のロボット関連メーカーによる高速道路でのロボット開発など、
ロボットメーカーとユーザ企業が手を組んでロボットの事業化を進めていく動き。
?緊急地震速報対応
10月から気象庁が配信を始めた「緊急地震速報」に対応した「エレベータ地震時管制運転システム」(日立ビルシステム)や、「緊急地震速報」を受信すると警告灯が点灯、音声によるカウントダウン、ガスの遮断、ドアロックの解除、エレベータの最寄りの階への自動停止など、マンション全体がシステムとして対処する「緊急地震速報付」マンションも登場。
?商用車安全運転支援システム
レーダセンサーで先行車両との車間距離や相対速度でブレーキを制御するコントロールアシスト(日産)など、一般車への安全運転支援システムの実用化が進む一方、商用車の安全運転支援(「ギガ先進予防テクノロジー」「みまもりくんオンラインサービス」<いすゞ>)も大きな動き。
?ロボット音楽プレーヤー
ロボット技術を使った音に合わせて動く音楽プレーヤー(ミューロ(ZMP)、ローリー(ソニー>)が登場。家族や仲間皆んなで音楽を楽しんだり、パソコンを使って動きのプログラムを自分で作成するなどの新しいリスニングスタイルを提案している。
?RTミドルウェアの標準化
日本のロボット用ミドルウエア(RTミドルウエア)をベースにしたロボット技術の仕様が国際標準化団体OMGで正式に承認され、正式発行。
これにより、今後ソフトウエア開発の効率化やソフトウエアの再利用が進み、ロボット開発のコストを削減でき、低価格のロボットが商品化できると期待される。
?トヨタの宣言
トヨタは理化学研究所と知能化についての共同研究や、次世代車載情報プラットフォームやOSでのNECとの共同開発を発表。
また人に役立つパートナーロボットの取り組みについて、2010年代の早い段階での実用化を目指すという。
(つづき)
就任1年目でJリーグを制覇した鹿島アントラーズのオズワルド・オリヴェイラ監督は、さまざまな言葉を使って、選手を奮い立たせてきた。
それは、「オズの魔法の言葉」と言われている。
曰く、
○6月は必ずアントラーズが上位に顔を出すはずです。そうした強い確信のようなものを持っています。
(5月終了時9位だったチームは、6月末には4位にまで浮上)
昨年の国際ロボット展の特徴は、サービスロボットのビジネスをいかにして立ち上げるか、に尽きる。
産業用ロボットからサービスロボットを開発、実用化するという大きな流れは見えてきたものの、併催セミナーでもサービスロボットのビジネスについて、国内外のさまざまな立場の人がさまざまな意見を述べていた。
それら意見を列挙すると、
・顧客ニーズに基づく開発
・顧客との共同開発
・ロボットではなく、課題解決のための機能の提供
・ロボット単体ではなく、システムを提供
・顧客の新しい価値の提供
・メーカとしての信頼性(品質管理、メンテナンスなど)
・機能の安全、安心
・人材の育成、教育 などなど。
しかし、いまだ、その「解」は見えてこない。
ふたたび、「オズの魔法の言葉」から。
○選手が手ごたえを感じていない限り、チームは機能しないもの。
(5月26日の甲府戦後に「監督としての手ごたえ」を問われ)
○この5試合の結果が今の自分たちの姿だ。言い訳はしない。
(リーグ開幕から5試合未勝利となった4月7日の大宮戦後)
そして、
○残り16試合を全勝すれば十分に可能性がある。「馬鹿なことを言う」と思う人がいるかもしれない。だが、そうした誰も信じないことでさえ、実現するように取り組まなければならない。なぜなら、私はプロだからだ。
(首位との差が今季最大の11に開いていた夏季キャンプでの言葉)
(つづき)
2007国際ロボット展で行われた「川上川下ロボット・ビジネスセミナー」。
ロボットビジネスが振興していくにはどうすればよいか、行政、メーカ、ユーザから発表があった。
その中で、岐阜県各務原市にある早稲田大学WABOT - HOUSE研究所の小笠原伸氏が、他のスピーカーとは違う視点カで、地域におけるRT(ロボットテクノロジー)のビジネス振興について述べてた。
WABOT - HOUSE研究所は、スタート当初、ロボットによる地域振興をロボットの難しい資料や英語で書かれた論文などで謳ったため、それは自分たちと関係のない世界だと地元の人たちに思われたそうだ。
そこで、寄席やクラフト展などと同じようにロボットも地域を活性化するプロジェクトのひとつであると、「WABOT - HOUSE辻説法」や子供向けのものづくり教室など、地元のNPOとも協力して地域に溶け込む地道な活動を始めた。
つまり、一発ホームランを狙うのではなく、派手ではないが、コツコツと打率を稼ぐことにした。
RTなんて自分たちとは関係ないと思っている地元企業には、RTは既存技術の「置き換え」であり、RTを導入することで企業の強みも増し、それが地域の防衛にもなることを訴えた。
小笠原氏は、
「映画やテレビも最初は技術畑の人を中心に製作していたが、今はコンテンツが主役になっている。
RTは既存技術のそんなところにも置き換えることができるのか、と地元企業にわかってもらうためには、いきなり全部をRTと考えるのではなく、段階的に細かく「切り分けて」その道筋を示す必要がある」
と述べた。
そして、
「ロボットの多くは都市型の発想である。RTが地域で産業化していくためには、民俗学的アプローチが必要なのではないか」と。
(つづく)
(つづき)
2007国際ロボット展で併催された「第3回韓日サービスロボットワークショップ」。
松下電工の北野幸彦氏が無軌道自動走行ロボットの事例について講演した。
松下電工はこれまで病院内で薬やX線フィルムなどを運ぶ「HOSPI」や、愛・地球博で屋外清掃を行う「SuiPPi」を開発。
2006年10月からは生体臨床検査(病院などから届けられた血液)の搬送を自動で行う「血液検体搬送ロボットシステム」をユーザ企業の工場で稼動させている。
「血液検体搬送ロボットシステム」は、「障害物回避」と「無軌道自律走行」の技術をベースに、血液検査検体の受け取りから自動分析装置へのセッティング、さらには検査後の回収など群制御コンピュータで、最大10台のロボットにより搬送業務を行うシステム。
自動充電で24時間連続運転も可能だそうだ。
稼動後1年間、大きなトラブルもなく、ユーザからの評価も高いようだが、その要因として、
・メーカとしての信頼性
・機器の安全・安心
・顧客ニーズでの開発
を挙げている。
また、
・毎日、経営の必需品として使ってもらえること
・導入後、満足して使ってもらうためのメーカとしての覚悟
・価格を含んだユーザとのディスカッション
の必要性を述べている。
そしてなにより、
切実なニーズを持っている顧客とコンタクトし、価格、納期、課題などについてユーザとよく話し合い、毎日使ってもらえる「商品」とすること
その重要性を強調した。
(つづく)
2007国際ロボット展で行われたJETRO主催の「ROBO LINK FORUM」。
iRobot社の共同設立者であり、会長のヘレン・グレイナー氏が講演した。
実用ロボットの分野でもっとも成功している経営トップの話とあって、会場には多くの人が詰め掛けた。
しかし、その内容は、
1990年の設立以来、あらゆる種類のロボットを開発、実験したがことごとく失敗したこと、
10年以上に渡る試行錯誤の末に掃除機ロボット「ルンバ」にたどり着いたこと、
その「ルンバ」シリーズは全世界で250万台以上を売り上げていること、
爆弾処理ロボット「パックボット」も世界で1000台以上配備されていること、
ロボットベンチャーで唯一NASDAQに上場していること、
そして、今後もルンバや床掃除ロボット「スクーバ」などのホームロボットと、パックボットなどの軍事用ロボットの2本柱で事業を進めていくこと、
などなど、皆良く知られたことばかりだった。
その後の質疑応答でも、どうすれば次世代ロボットが普及していくと思うかという進行役の問いに、他のスピーカーが、安全性、機能、価格などと真面目に答える中、
グレイナー氏は、
「多くの人が、ロボットは本当に使えるの?と疑いを抱いている。その猜疑心を消していかなければならない。それを証明するためにも皆さんがルンバを7〜8台購入してくれればロボットも普及していく」
と軽くいなしていた。
グレイナー氏は、映画「コンタクト」でジョディ・フォスターが演じた天文学者のように、利発で、笑顔がとてもチャーミングな魅力的な女性だが、
ベンチャーキャピタリストから「空想科学小説の世界」と言われながらもiRobot社を15年で年商2億万ドルの企業に育て上げ、またアメリカ軍や世界の軍事関係者とも深く関わっているだけに、現場叩き上げの凄みを感じる。
世界を相手にしたiRobot社のダイナミックな展開の前では、日本のロボット業界はいかにもチマチマした印象を受ける。
グレイナー氏の目に日本のサービスロボットがどのように映ったのか、本音を聞いてみたいと思った。
(つづく)