先日、ロボットベンチャーを巡る新たな動きがあった。
ひとつは福岡、大阪、名古屋、東京のロボットベンチャー4社が提携して、次世代ロボットの市場を創造していこうとする「連盟」の決起集会。
もうひとつは動く情報提供メディアとして独自の「ロボット放送」を展開するという発表会。
上記2つは目指す方向性は違うものの、自分たちの手で「ロボットの新たな市場を創る」という意気込みでは一致している。
しかし、その「市場」がどのように「創造」されていくのかについて、いまひとつ具体的な姿が見えない。
それはロボットベンチャーだけの問題でなく、ロボット業界全体の課題でもあるだろう。
キラーコンテンツや新技術が登場して、いきなり市場が拡大するということも100%ないとはいえないが、今のところその兆候も特効薬もありそうもない。
背に腹は変えられないけれど、「市場は必ず創造される」と信じて、当面は自分の懐具合と体力に応じてやっていくしかなさそうだ。
TV通販番組で乗馬型機器「ロデオボーイII」を実際よりも著しく体重を減らす効果があるように紹介したとして、公正取引委員会はテレビ朝日に対して景品表示法違反に当たる恐れがあると警告した。
機械の不具合でメーカーが機械を回収するというのはありがちだが、機械の「効用」について「優良誤認」があったとして、機械を紹介した「メディア」が警告されるのは初めてとのこと。
公取委は「大きな影響力のあるメディアであり、厳しい対応を求めた」としている。
新しい機械であるロボットは、消費者にその効用をわかりやすく説明する必要がある。
そのため、説明時間もじっくり取れ、インフォマーシャル(記事+広告)型なTV通販は、ロボット販売にもっとも適した媒体だ。
実際、「ロデオボーイII」のような乗馬型機器や掃除ロボットなどは頻繁に紹介され、売り上げも伸ばしている。
また、TV通販には家電や美容製品を短時間で何億円も売りまくるカリスマ通販員がおり、ツボにはまれば短期間で大きな売り上げが期待できる。
今後も、もっとも効果的なロボットのプロモーションチャネルとして、TV通販は活用されていくだろう。
ただし、過大で不当な「効用」表現がロボット普及の障害になり得る可能性のあることを、今回の公取委の警告は示している。
三菱重工の国産初のジェット旅客機・MRJ(三菱リージョナルジェット)が参入する100客席未満のリージョナルジェット市場は、カナダのボンバルディアとブラジルのエンブラエルが市場を独占しており、ロシアや中国のメーカーも国をあげて参入を目論んでいる分野。
MRJの最大のウリは、燃費効率30%UPの高い経済性。
これは新型エンジンと主翼、尾翼に使用した炭素繊維複合材(強さが鉄の10倍で、軽さがアルミの6割〜7割)により実現したもの。
当初は欧米2社、国内2社の受注を見込んでいましたが、結果は全日空1社のみ。
しかも、その取引条件は「値引き+パイロット用意」。
また10機分はオプションのため、実質は15機とのこと。
事業が軌道に乗るには、少なくとも350機の受注が必要のため、前途は相当多難だといえる。
航空会社の機種決定のポイントは、飛行機の性能や価格はもちろんのこと、運行後のメンテナンスやサポート体制の良し悪しが重要な要素となる。
ボンバルディア社では、航空会社からの修理要請や数100万点の部品供給に、技術スタッフが24時間体制で対応している。
MRJもスウェーデンの航空機メーカーがサポートを行うようだが、いずれにしろ機体性能の信頼獲得、サポート体制の充実までには長い時間がかかるだろう。
MRJは10年から15年の赤字は覚悟とのこと。
それは航空機製造が技術の高度化を進める総合技術の固まりであり、それが日本の産業競争力を高めることに繋がるからとしている。
どこかで聞いたフレーズだ。
人と接する新しい機械であるサービスロボットは、まだ検討に値する商品がほとんどないということもあり、現状ではぴったりあてはまる法律や安全基準がない。
当分の間は、製品化されたロボットごとに既存の法律に照らし合わせて、もっとも適した法律を適用することになる。
とはいえ、構造や機能が近い既存の類似した機械との比較が有効とされている。
また、完璧な安全性を強調しすぎると、まったく普及の目途がたたないこともあり、生じるリスクより、「効能」を優先させる方向で考える必要がある。
これは医療機器のリスクマネジメントと同様の考え方で、リスクはあるかもしれないけれど、機械を使うほうがそれ以上の利益を利用者にもたらすと捉えるもの。
サービスロボットの安全性の基準づくりは、日本がもっとも進んでいるといわれているが、
もちろん海外でも、KUKA社が「ロボコースター」でドイツの技術検査機関に安全性の認証を受けたり、
ロボット特別法が制定された韓国で安全性の基準づくりが進められたりといった動きがある。
今後、日独韓3国で、共通の安全基準がなされることもあるかもしれない。
※上記のサービスロボットの安全性については、(独)労働安全衛生総合研究所 池田博康氏がロボットビジネス推進協議会安全対策検討部会で講演した内容の一部を参考にしている。
産学連携が各地で盛んに行われていますが、うまくいったという話はあまり聞かない。
そんな中、見事なビジネスモデルがある。
「頭を鍛える」ソフトの研究開発で有名な東北大学加齢医学研究所の川島研究室。
同研究室では、企業が開発した製品やシステムが、それらを利用する人の脳にどんな影響を与えるか、科学的に評価して、その情報をもとに企業での製品開発を推進する産学連携研究を進めている。
今度はヤマハ発動機とオートバイ乗車が脳の活性化に及ぼす効果について研究を行う。
産学連携において「科学的な検証と評価を商品開発に生かす」という手法は他でも例があると思うが、川島研究室の成功のポイントは、
いまだよくわからない人間の脳の状態をわかりやすい画像(脳機能イメージング)や数値に置き換えることで、「老い」をより豊かに過ごす商品や「子供」のすこやかな成長を支援する商品に説得力をもたせたこと、だろう。