ノーベル物理学賞が発表された同じ日。ロボットスーツ「HAL(福祉用)」のリース販売開始の発表があった。
35年前に発表された論文が評価されるのに比べれば、だいぶ早いが、それでも開発者の山海教授からすれば、ずいぶん長い助走の末、ようやっと離陸したという心持ちだろう。
「HAL(福祉用)」は当初個人にではなく、福祉や介護施設向けにリースで販売される。ユーザーの声を反映し、これから様々な改良と新たな展開がなされていくはずだ。
とはいえ、そのリース料金は単脚タイプで15万円/月、両脚タイプで22万円/月。年額にすると180万円と264万円になる。
これは5年リースの場合なので、5年間使用するとそれぞれ900万円と1320万円かかる計算だ。
大手住宅メーカーの大和ハウス工業が販売を手掛けるとはいえ、2006年4月の改正介護保険法の施行以来、多くの介護事業者はぎりぎりの経営状況が続いており、今後リース料金の妥当性、特に費用対効果についてはやはり厳しく問われることになるだろう。
しかし、重作業労働支援や災害現場でのレスキュー活動など、「人の役に立つロボット」として幅広い分野で様々な可能性のあるロボットスーツなだけに、事業として是非成功してほしいと強く思う。
今のところ、大和ハウス工業も長い目で考えているようだ。
警察庁は近く道交法施行規則の一部を改正して、「電動アシスト自転車」の補助率を最大2倍に引き上げることを決めた※1。
これは人の力と原動機で補う力の比率を、1対1(補助率1)を1対2(補助率2)にする※2ことで、発進の際や坂道走行など低速時の負担をより軽くするというもの。
自転車は移動手段である以上、基本的に車道を走るわけですが、安全面から自動車と同列で扱うわけにも行かず、かといって歩道では歩行者が優先されるなど、自転車の法律的位置づけは非常にあいまいだ。
また、全国にある自転車専用の自転車道は約8万キロで、そのうちの約90%が「自転車歩行者道」。
つまり「自転車通行可の歩道」だ※2。
無駄な自動車道より、身近な自転車道を増やしてほしいと思う人は多いと思うが、自動車税、ガソリン税など「カネを吸い上げられない」自転車のために専用道を造ろうということにはならないようだ。
ちなみにヨーロッパの都市では、一般車両が通らないことや、バスと自転車の速度差が少ないことなどから、「バスレーン」を自転車の走行空間として活用しており、日本でも金沢市内で導入が始まっている。
自転車、特に電動アシスト自転車の道路交通法上の取り扱いは、今後パーソナルモビリティが一般道で走行できる際の参考になるものだけにその動向が注目される。
※1 時事通信10月2日
※2 時速15キロまで
※3 ウィキペディア 自転車道
職業としてロボットに携わる人にとってロボットは実用化されることが宿命づけられた機械。
極論すれば、人々のロボットへの期待も「今までにない役立つ機械」の登場にあると言える。
しかし、単体=点としてのロボットは技術面での課題が数多く、そのため環境やネットワークを介して、いかに面展開していくかがと問われている。
面展開するためには全体を構築、連携させるシステム技術や、メンテナンス、コミュニケーションスキルといったサービスに関わる分野が大変重要になる。
そして、ロボットを導入することが費用対効果につながり、生産性が向上し、利便性も高まるなど、ロボットを面展開した場合のメリットをユーザーにアピールする必要がある。
そこがロボットビジネスのポイントだと思うが、言うは易く、頭では理解していても、現実はままならない。
村田製作所が発表した一輪車型ロボット「ムラタセイコちゃん」。
「ムラタセイサク君」の年下のいとこで、活発だけど照れ屋な幼稚園の年長さん。
夢はセイサク君と世界一周をすることだそうだ。
ロボットらしいカタチをしたロボットが、まだ実用化されていない現状では、「ムラタセイサク君」やホンダの「ASIMO」などは企業の広告塔としての役割を担っている。
月並みに言えば、先端的な技術力をアピールすることで、企業イメージの向上や社員のモチベーションUP、またリクルーティングにとても効果があるといえる。
そして、企業の広告塔としてのロボットの最大のポイントは、独自の世界観を表現し、それを大事にするということ。
世界観を表現するためには、背後に必ず「ストーリー」が必要であり、そしてその「ストーリー」に感情移入できることが望ましい。
村田製作所もホンダもそれを実現するために「ロボットの成長物語」をその表現スタイルとしている。
人々が夢見る「ロボット」が登場するのには、まだまだ時間がかかる。
その間に独自の「世界観」をしっかり作っておくことも企業ロボットにとって、大変大事なことであり、「ロボットの成長物語」は人々の心の琴線に触れる最も効果的な方法なのだろう。
パラマウントベッドが販売する入院患者向けオリエンテーションDVD。
自分が転ぶとは思ってもいない患者に具体的事例を示し、用具の適切な使い方とリスクを知ってもらうことを目的としている。
サンプル映像を見ると、なるほどと思える事例が紹介されている。
近い将来、病院や介護施設をはじめ、様々な場所にロボットが導入されると、現在ある自動車教習所やパソコン教室のような「ロボット教習所」で、オリオンテーションツールを用いてロボットと暮らすための具体的な事例や、事故を未然に防ぐ予防法・対処法などについて学ぶ日もくることだろう。
実際、コミュニケーションロボットを導入した介護施設などからは現在でも、導入後のロボットの活用方法について具体的に紹介するツールがほしいという声が挙がっている。
ロボットが人と接する機会が多くなればなるほど、ロボットと円滑にコミュニケーションを図るための事前講習やアフターフォローが重要になり、リスク回避のための映像ツールや事故が起こった際の保険も増えていくことだろう。