経済産業省が「ロボット・プレ普及期」と位置づけていた2008年。
しかし、具体的な動きとしては、
大和ハウス工業がサイバーダインの「HAL(福祉用)」のリース販売をスタートしたことに留まった。
マスコミを通して取り上げられるロボットの多くは相変わらず、各地のロボット大会であり、または実証実験段階のロボットあるいはプロジェクトの成果展示であり、あとは2007年までに発表されたロボットだった。
国のプロジェクトとして実施された「人間支援型ロボット実用化基盤技術開発」のロボットも、そのほとんどが実用化の見通しはまだまだ先。
そんな中、来年につながる動きとして、
・次世代ロボットの市場創出を目的とした連盟の旗揚げ(ロボットベンチャー4社)。
・「歩行アシスト」機器の共同実験と「体重支持型歩行アシスト」の試作機の公開(ホンダ)。
・次世代ロボットの共通基盤技術のソフトの発表(産総研)と、ネットワークを介してロボットに様々なサービスを提供するソフトウェアの公開(RSi)。
・新東名高速道路上で展開するさまざまなサービスを実現するための新技術の募集(中日本高速道路)。
などがあった。
今年下半期のロボット・トピックスを挙げてみた。
○パワーアシスト機器の実用化、始動
大和ハウス工業はサイバーダインとロボットスーツ事業に関する総代理店契約を締結。10月から「HAL(福祉用)」のリース販売を開始した。
また、ホンダも脚力が低下した人の歩行をサポートする「歩行アシスト」の共同実験を実施する共に、脚・腰にかかる負担を軽減する「体重支持型歩行アシスト」の試作機を公開した。
○パーソナル・モビリティ活用の動き
日本SGIはJTB中部と中部国際空港内をセグウェイで見学するガイドツアーを行うと共に、セントラル警備保障とAED、GPS、消火器を搭載したセグウェイによる「動く安心・安全」を検証。
またトヨタは立ち乗り型パーソナル移動支援ロボット「Winglet」の開発を発表した。
○エコドライブの支援と電動ハイブリッド自転車の人気
夏のガソリン価格の高騰を受け、自動車メーカーはエコドライブをサポートするアクセルペダル「ECOペダル」(日産)、低燃費運転を支援する「エコロジカル・ドライブ・アシスト・システム」(ホンダ)、省燃費ルートやETC割引ルートを配信(ホンダ)などのエコドライブを強化した。
また環境にやさしい電動ハイブリッド自転車の人気が高まり、自転車メーカー各社から回生充電機能付き(パナソニックサイクルテック)や、最適なアシスト制御ができる新機構搭載(ヤマハ発動機)などの新商品が次々に発売された。
○デジカメにおける画像認識技術の多様化
人物の顔を12段階のレベルでメイクアップするように美しく撮影できるデジカメ(カシオ)や、最適なシーンを自動判別するデジカメ(オリンパス)など。
○健康支援ケータイ
日々の健康管理や食生活の改善をサポートする携帯電話の発売(NTTドコモ)。
○その他
「人間支援型ロボット実用化基盤技術開発」の成果展示(NEDO)、少子高齢化社会を新しいテクノロジーで支えていくことを目的に2006年にスタートした東京大学IRTプロジェクトの2年間の成果発表が行われた。
また、ネットワークを介してロボットに様々なサービスを提供するソフトウェアが公開された(RSi)。
ロボットがあらかじめ決められたプログラムだけではなく、その場の状況に応じて、自ら行動し、コミュニケーションを行うためにはどうすればいいか。
その答えの一つがインターネットを介して、膨大な情報をやりとりすることで、円滑なコミュニケーションや、機能のバージョンアップを図る、いわゆるネットワークロボットという考えですが、例えば、ホームネットワークビューワなどと、なにが違うのか。今ひとつ具体的なイメージが湧いてこない。
もちろん機械本体に「動き」があること、多数のロボットが連携して行動できることなどが特徴だと思うが、ロボットの手足がバタバタ動くだけだったり、ロボットが連携する意味づけが明確でなければ、ネットワーキングしなければならない理由がわかりにくい。
先日発表された東京大学IRT機構の「思い出し支援技術」。
これは、ロボットと室内カメラが連携して、日用品をどこにしまったかを教えてくれたり、人の動作を見守ることで、例えば薬を飲んだことなどを教えてくれるというもの。
まだ応用例が少な過ぎて、今後の展開も未知数だが、見守りロボットが人の行動を画像データベースで管理して、ネットワークを介して検索。その結果を「動き」や音声、あるいはTVモニターの画面で伝えるという、ネットワークロボットの一つの方向性は示していた。
(つづき)
・ボタンを押せばクルマのパワーウインドーが開くように、家の窓もボタンを押せば窓が開くというのもありではないかと思うが、何かあったときに困ると考えるお客さまが多いので、そのあたりの不安を払拭できる商品を開発する必要があるだろう。
便利さを追求しながらも人への負荷を減らし、人にやさしく、かつ安心な商品であることが重要だと思う。 (住宅設備メーカーD社)
・ベッド単体ではなく、寝室の設備(カーテンや照明など)や映像(テレビなど)と連動していくことに可能性があると思われる。
ただし、全部が機械になるのではなく、本をめくる行為自体が本を読む楽しみのひとつであるように、アナログ的な要素はあったほうがいい。行為が残っている部分が「贅沢」だと考える。
(住宅設備メーカーE社)
・最先端の技術を投入しても、お客様のニーズと合致しなくては意味がない。利用者に配慮した製品作りが不可欠と考えている。お客様のニーズをキャッチして、デザインや環境配慮、便利な機能など付加価値の高い商品を開発していくこと。 (住宅設備メーカーF社)
・家の中でまだ電気化されていないものにセンサーをつけることは少々ハードルが高いが、すでに電気化されたものにセンサーをつけて自動化することは比較的取り組みやすい。
ロボットは重たい荷物を持ったりするような「重い」技術ばかりではなく、センサーとコンピュータを使った「軽い」技術もあることをもっとアピールすべきだろう。それは、ロボットの概念をもっと「軽く」することにつながる。「その程度だったらわれわれにもできますよ」ということになればいいのではないか。(ロボットメーカーG社)
(つづき)
印象に残った担当者の言葉。
・お客様からの要望には可能な限り応えていく姿勢ではあるが、新しい機器・技術は積極的には勧めていない。その理由として、長期的視点でみた場合の品質が検証できないので。(住宅メーカーB社)
・センサーによりスイッチを入れる照明や換気扇などに関しては、むやみやたらに取り入れるのではなく、居住者の生活に必要なものだけを取り入れる。次世代生活支援機器・技術に関しても、費用対効果をみて、良いものなら取り入れる考え。(住宅メーカーC社)
・完全に自動化することは容易だが、すべてそうなるのではなく、人間主体の、人間にやさしい動きとは何なのか。阪神大震災のときに家が揺らいで玄関ドアが開かなかったことが大きな問題となったが、例えば、緊急地震速報と連動してドアが半開きになり、脱出経路を確保するなど、ドアだけでなく、住宅全体に考えを広げたときに何ができるのかを考えていきたい。
玄関ドアから情報が発信できたり、緊急時には確実にドアが開いたり、ホームセキュリティとの連携なども考えられる。(住宅設備メーカーB社)
(つづく)