成田ゆめ牧場で昨年11月に生まれた「ウシ柄のヤギ」の名前が発表された。
その名は「うしかちゃん」。
ホームページの写真には「お前はうしか!?とツッコミを入れてね」と書かれている。
人間によって無理やり作られたレオポンや、中国で話題になったパンダ犬などと違い、うしかちゃんは、自然分娩でウシ柄の個体として誕生した。
ウシ柄×ヤギという意外性。
たわいもないと言ってしまえばそれまでだが、うしかちゃんには、実用的ではないけど、居るだけで心が癒されるロボットのヒントがあるような気がする。
ちなみに、成田ゆめ牧場では有料でセグウェイが試乗できる。
製造業での非正規労働者の人員削減、解雇が大きな社会問題になっている。
これまで、企業の社会的責任(CSR)を掲げ、日本の生きる道は「モノづくり」と喧伝してきた大手メーカーが、今真っ先に行っているのが、製造現場での「人減らし」。
アメリカの金融不安に端を発する世界的な景気減速を、一企業の経営責任と言い切るほど単純なものではないが、危機に及んで大手メーカーがどのような対応をとるのか、しかと見る必要がある。
「モノづくり」現場の人材を大切にしない製造業に愛想が尽いた若者や国民は、多い。
今年の箱根駅伝は、一人のスーパールーキーの快走とその活躍に刺激された部員たちの発奮により、東洋大学が初の総合優勝した。
企業が商品を開発・生産・販売する場合、大きく分けて「作ってから売り方を考える = プロダクトアウト」と、「購買者の視点、ニーズを重視する = マーケットイン」という手法がある。
ロボットは、良く言われているように、これまで極度な「プロダクトアウト」型の開発シーズ先行商品が多く、その結果、市場が立ち上がらない状態が続いてきた。
その反省から、ニーズ重視の「マーケットイン」型商品開発へと舵を切りつつあるが、数々の調査結果が示すように、一般ユーザーのロボットに対する要求は多種多様であり、かつ汎用性が高く、しかも廉価であることを求める傾向にあるなど、越えるべきハードルが極めて高い。
Ken Okuyama Designの奥山清行氏はその著書※の中で、方向性や目指すビジョンが見えてこないうちにニーズ調査をすることの危険性について、
「一旦リサーチして、「知ってしまった」ら、調査する前の「知らない」自分たちに戻ることはできない。情報には思わぬ力があるから、出てくるアイデアも影響を受けてしまう。
(中略)
今の時代、メーカーの技術力に大きな違いはない。違いが出るのは特色の部分で、そこで選ばれなければ、生き残ることは不可能だ。
特色をどう出すかも考えずにリサーチするのは、自殺行為に近い。まず自分たちの作りたいもの、作れるものを確認し、プロダクトの方向性を決める。それから、その方向性を軸にリサーチをかけ、結果に基づいて修正を加える。そうしなければ、ものづくりの世界で生き残る手段は、価格競争以外になくなる」
また、
ものづくりとは、未来の顧客のために創造し、物語を売ることであり、常識ではなく、良識を持つこと。実用的で必要だから買うものではなく、「買いたくて仕方のないもの」を作る「覚悟」が大切
とも述べている。
一般ユーザーは必ずしも自分が欲しいものを明確に知っているわけではない。
ロボットのような新しい製品やサービスは、やはり提供側が「メニューを提案」し、「ユーザーメリットを示す」必要があるだろう。
一人のスーパールーキーの登場により、チーム全体が発奮し、総合優勝した東洋大学のように、まずは「買いたくて、仕方のない」スーパールーキーなロボットの登場こそ、ロボット市場全体を牽引していく、やはりそれが理想の姿のような気がする。
※「人生を決めた15分 創造の1/10000」(ランダムハウス講談社)
「カタチ」にとらわれないロボット技術は、今年も自動車、家電、ケータイ、デジタルカメラ、自転車などさまざまな分野で商品化され、またシステムの一部として実用化された。
今年ロボカーサで取り上げた商品をあらためて紹介する。
◎ロボティックライフスタイル・コミュニケーション
?ロボティック・カーサ
・MEDIA PORT UP 300x (ニコン)
・ホームネットワークビューワHNV-70 (三洋電機コンシューマエレクトロニクス)
・家中どこでもドアホンSWN350KL (パナソニック)
・次世代ホームネットワーク SAN GENiS (三洋ホームズ)
・らくらくホンV (富士通)
・NSD (YKKAP)
・電動ハイブリッド自転車 エナクルSPAシリーズ (三洋電機)
?ロボティック・カー
・NR-HZ001シリーズ (三菱電機)
・Strada Fクラス (松下電器産業)
・クラウンハイブリッド (トヨタ自動車)
◎ロボティックシステム・イノベーション
・ロボットスーツ「HAL(福祉用)」 (大和ハウス工業)
マンチェスター・ユナイテッドの優勝で幕を閉じたFIFAクラブワールドカップ。
その大スポンサーであるトヨタは、サッカーを始め、スポーツ競技、文化芸術、環境活動など世界中のあらゆる分野、さまざまな地域から活動の支援を依頼されている。
ロボット分野でもトヨタへの期待は非常に大きく、日本ロボット工業会、東大IRT機構をはじめ、全国の産業振興団体などからさまざまな協力を要請され、「トヨタ頼み」の傾向は年々強まっている。
トヨタ自身もロボットを研究開発するだけの「研究所」ではなく、事業として利益を出すことが求められる「パートナーロボット部」を立ち上げ、早ければ2010年中での介護支援ロボットの実用化を明らかにしており、2009年初頭には、愛知県豊田市に建設した50m×70mのロボット専用棟に、これまで分散していた事業部スタッフを集約して、100人体制で介護・医療支援、家事支援、移動支援、工場内作業支援、パーソナル移動支援の4つの領域でのロボットの開発と実用化に取り組むことになっている。
事業部の当初予算は約50億円。これまで発表されてきたパーソナル移動支援「Winglet」や施設案内「ロビーナ」をはじめ、未発表のさまざまな研究開発ロボットの中でどれが事業として成り立つか、2009年3月末を目途に精査していくことにしている。
ロボット関係者の期待と希望を一身に受けるトヨタだが、ここに来てアメリカの金融危機に端を発した世界的な景気減速により、2009年三月期の営業利益が30%減になることを発表した。
パートナーロボット部の予算も発足当初は100億を予定していたようだが、それが50億となってしまったいきさつがあり、トヨタ本体が今年度減収減益となることから来年度の事業部予算の縮小も避けられない状況かもしれない。
それでも、ロボットビジネスが立ち上がるか否かの鍵は、大黒柱のトヨタがここでどれだけ踏ん張れるかにかかっている。
ロボットを実用化しても「事業」として収益が出るまでに一体どれくらい時間がかかるのか、今のところまったくわからないだけに、景気減速が鮮明になる中、トヨタがどのような判断を下すのか、2009年の動向が注目される。