昨年、上野の東京国立博物館にプライスコレクション「若冲と江戸絵画」展を観に行った。
伊藤若冲(じゃくちゅう)を中心に円山応挙(おうきょ)長沢芦雪 (ろせつ)酒井抱一(ほういつ)、鈴木其一(きいつ)などの江戸の画家の作品100点あまりが展示されていた。
どの作品も個性豊かで理屈ぬきにおもしろいかったが、その理由は、
50年前にニューヨークで魅せられ、誰の作品かわからぬまま購入した葡萄の絵が、のちに伊藤若冲が描いたものとわかったというように、ジョー・プライス氏が作家の名前ではなく、自らの琴線に触れる作品を選んできたから。
既成の専門知識ではなく、プライス氏独自の感性が作品選びの基準になっているので、展示されたどの作品も生き生きと、のびのびとした印象を受けた。
圧巻は、
「江戸時代にガラスケースはなかった」というプライス氏の意向による、
ガラスケースを用いず、光の効果に工夫を凝らした展示室。
金箔や銀箔の屏風画が光の明暗で微妙に変化していく様が絶妙で、
まるで「映画」を観ているよう。
単に古びた印象でしかなかった屏風画が、ライティングによる環境変化で活き活きとした生命感を取り戻す、その「瞬間」に立ち会うことができた。
絵画もロボットも環境とのインタラクション(相互作用)が大切だな。