今年は東日本大震災・福島第一原発事故を避けては語れない1年となった。
震災・原発事故があって明らかになったことは、サービスロボットがまったくと言っていいほど役にたたなかったということ。
役に立たなかった理由は、挙げればいくつかあるものの、それらはすべてロボット開発者の言い訳にしか聞こえなかった。
特に原発事故対応では、一部の研究者と大学だけがメディアの脚光を浴びたが、研究者やその所属大学だけが目立っているうちは、ロボットはいつまでたっても役立つものにはならない。
原子力災害に対応できる極限作業ロボットプロジェクトや約60億円を費やした愛知万博でのロボット開発プロジェクトを始め、この約30年で300億円を優に超える税金をロボット関連プロジェクトに使ってきた。
震災・原発事故は、日本のサービスロボット30年の開発成果を国内外にアッピールする絶好の機会だったにもかかわらず、多くの人々に深い失望だけを残す結果となってしまった。
ロボット開発者は、役に立たなかった言い訳を述べるのではなく、何が足りなかったのか、何故役にたたなかったのかを素直に反省し、この教訓を将来につなげてほしいと思う。
国のロボット開発プロジェクトは現在行われている「生活支援ロボット実用化プロジェクト」(2009〜2013年度)で、一応の終息が図られようとしていたが、皮肉にも震災・原発事故が起きたことで、「災害対応無人化システム研究開発プロジェクト」(NEDO)を始め、被災地でのロボット開発事業がスタートすることになった。
ロボットはタスクやミッションが明確であればあるほど活躍できる可能性が高い。
今後40年をかけて行われる福島第一原発の廃炉に向かっての作業や放射能汚染の処理、がれきの撤去等を通じて、日本のサービスロボットが本当に役立つロボットとして飛躍できるきっかけになるかもしれないが、そのためにはロボット開発者の意識の変革が問われることになるだろう。
それはニーズが高いと思われている介護分野のロボットについてもいえる。
神奈川県の介護ロボットモデル事業を通じてわかってきたことは、完成度の高い製品でも、開発側と介護現場とでは、ロボットの導入、運用面で意識のかい離が甚だしいということ。
今後はロボットを導入、運用するための現場教育をいかに開発、普及させていくか。そこが問われていくことだろう。