これだけ大きな出来事(大震災・原発事故)が起こると、誰もが自分で出来ることがあれば何かしたい、困っている人があれば手を差し伸べたいと思い、多くの方が積極的に行動を起こしている。
そんな中、山田洋次監督が新作映画『東京家族』の製作を延期し、2012年春の東京を舞台にした物語に脚本を見直すことが発表された。
延期した理由について監督は、「一年以上の歳月をかけて入念に準備を整え、間近なクランクインを控えてスタッフやキャストの気力が充実しきっていた時、3月11日の大災害が発生しました。このままそ知らぬ顔で既に完成している脚本に従って撮影していいのだろうか。いや、もしかして3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか。僕は何日も悩み、会社ともくり返し相談した結果、それこそ苦渋の選択をしました。撮影を中断して今年の終わりまでにこの国の様子を見よう、その時点で脚本を全面的に見直した上で戦後最大の災害を経た東京、つまり2012年の春の東京を舞台にした物語をこそ描くべきだ」と。
山田監督は1970年に長崎県の小さな島から北海道の開拓村まで旅する一家の姿を見つめた映画『家族』の中で、日本万国博覧会開催中の大阪や公害に悩む東京など、高度経済成長期の変わりゆく「今」の日本を描いた。
その山田監督が「3月11日以前と以後の東京の、あるいは日本の人々の心のありかたは違ってしまうのではないか」「撮影を中断して今年の終わりまでにこの国の様子を見よう」と決断したのには共感するし、監督が2012年春の東京をどのように描くか今から期待したいと思った。
同じ日、 日本学術会議の東日本大震災対策委員会は、福島第一原子力発電所の事故対策にロボット技術を活用すべき、との提言(※)を公表した。
現場各所の放射線量監視、画像撮影、試料採取、また、廃炉作業の一部完全自動化、新規ロボットや新運用システムの開発、自動移動ロボットによる連続巡回モニタリングと自立作業ロボットによる除染作業の一部完全自動化、そして災害対策支援ロボットを維持・保守・改良し運用訓練を行う恒常的な組織・システムの構築 などなど。
まったくタイムリー、ではある。
原発廃炉までには少なくとも10年、汚染除去後の更地まで30〜100年もかかるといわれている福島第一原発の事故処理。提言通りにいけば、ロボット関係者は数十年、食いっぱくれがない、ウマすぎる商売になる。しかし、この危急時にこれまで開発してきた日本のロボットは全く役に立たなかった。多額のプロジェクト予算で開発だけを繰り返し、「絵」になることでマスコミ受けだけは良く、本気で普及・運用を怠ってきたツケがあからさまになっていながら、その反省も、総括もなく、混乱に乗じて、カネずるを引っ張りこもうという魂胆が見え隠れしていると感じる。
3月11日以前と以後も、ロボット関係者の心のありかたは同じなのか