(つづき)
日本の宇宙開発利用の現状と今後の動向についてまとめた、「宇宙関連ビジネスの波及効果と有望分野」で取材した中で印象に残った言葉を紹介する。
・(準天頂衛星が打上がると)外回りで活動する人の時刻と場所が正確にわかるため、業務遂行証明サービスと呼べるビジネスが可能になる。
例えば、広域の屋外での作業を主体の作業員に機器をつけてもらうことで、作業の場所と時間の証明が可能となる。本人は時間・場所を申告する必要がなく、発注先も現場で作業を監視する必要もない。現在のGPSでも似たようなことは可能だが、ビル陰や木陰などでは電波が届かないので、マップにデータを落としたときに空白域がでたりする。大量のデータの場合に、これを手作業で修正するのは大変であり、正確な位置データが入手できると都合が良い。
その他、コンピュータの正確な時刻としての活用が考えられる。
例えば、金融取引などではms(ミリセコンド)以下の正確さが必要。1秒間に何十万件というトランザックションがあるときに、その時間順を厳密につける必要がある。つまり、売買のひとつひとつはどれが早く、どれが遅かったのかの順番付けをする必要がある。あるコンピュータから出た注文の正確な時間(μ秒)を知るためには、すべてのコンピュータの時間が合っている必要がある。そのためには室内に電波を引き込む必要はあるが、GPSチップをサーバーにいれることで、すべてのコンピュータの時刻が同期をとらなくても、衛星を介することで正確に同期する。これはアメリカでは宇宙PNT(Space-Based Positioning Navigation andTiming) 政策の一つとして推進されようとしている。日本ではポジションとナビはアプリケーションと考えているが、今後、衛星からの正確な時刻をどう使うかということを検討する必要があると考えている。(C団体機関)
・小型化した衛星に投資し、他国では提供できない付加価値のあるものを開発する。日本の実力が高い先端的な民生技術を活用して、衛星以外にも、例えば、ハイパースペクトルセンサーのような高性能センサーの開発を支援していく。
国際競争に勝つためには提供する製品・サービスを高性能化すると共に、低コスト化していく。また、研究開発しているだけだと納期がないので、いかに短納期化して、売り上げを確実化していくか。納期を守らなければならない政府の衛星は、情報収集衛星と気象衛星。企業の衛星(例えば、スカパーの衛星)も打ち上げられなければ、サービスが中断してしまうわけなので、当然短納期、かつ納期を守るということは実用衛星であれば絶対に必要な条件である。(D省庁)
(つづく)