NHKクローズアップ現代『 “私の人工呼吸器を外してください”〜「生と死」をめぐる議論〜。
「意思が伝えられなくなったときは、呼吸器を外して死なせてほしい」。
運動神経が侵され、全身の筋肉が動かなくなる難病、ALS(筋萎縮性側索硬化症)。
千葉県勝浦市で暮らす患者は、死を求める要望書をかかりつけの病院に提出した。
病院は医師、臨床心理士、同じ病気の家族、教育委員会教育長など14名からなる倫理委員会を設置。
1年間にわたる議論の末、倫理委員会は昨年、倫理上の問題はないとして、全会一致で患者の意志を尊重すべきと判断した。
『患者の意思を尊重しないことが「反倫理」になる。患者の意思の重みを大切にしてあげたい』と。
しかし、病院側は、患者が生死を選ぶ権利は認めながらも、現行法では呼吸器を外すと医師が自殺幇助罪等に問われる可能性があるとして、「患者の意思をどこまで尊重すればいいのか社会全体で考えて欲しい」とまだ結論を出さずにいる。
病気は情け容赦なく患者の機能を奪っていく。
歩行ができなくなり、自ら食べることも、口を動かすこともできなくなり、今ではわずかに動く目と右の頬を使って、パソコンの音声により意思を伝えている。
今後、まぶたが開かなくなれば、永久に暗闇の世界に身をおくことになってしまうという「恐怖」。
その恐怖はいかばかりものか、思うだけで胸が締めつけられる。
「意思表示ができる間は最後まで生き抜く。しかし、意思が伝えられなくなったときは、呼吸器を外して、栄光ある撤退を認めてほしい」。
ゲストの柳田邦男氏は、「精神性をもった命の重みは刑法だけでは計りきれない。一人ひとり個別性のある生と死であるべきで、一律に選別すべきものではない。刑法を棚上げし、国レベルの第三者機関である倫理委員会を設置して、そこでとことん議論し、その議論をオープンにすることが大切。そして、一つの結論が出てもそれを判例とするのではなく、その後も「個別性」の事案として一つ一つ議論し、長い年月をかけて判断していくべきもの」と語り、そして、
「個別性のある生と死が日本人として、また社会にとってどんな意味があるのかを考えると共に、患者の苦しさを支えていくシステムや患者の精神性を讃える文化を育てていく必要がある」と述べていた。
現在、原因が不明で治療方法が確立していないなど治療が極めて困難な特定疾患は、ALSをはじめ、悪性関節リウマチ、ベーチェット病など全部で123疾患。
果たして、難病患者にロボットテクノロジーはどう答えていけばいいのか。
深く、重い課題だ。
ちなみに、脳血液量の変化を利用してYes/Noを判断できる装置が実用化されている。
番組:NHKクローズアップ現代『 “私の人工呼吸器を外してください”〜「生と死」をめぐる議論〜』(2009.2.2)