どの分野でも突き抜けた人の仕事には、得もいわれぬエネルギーが充満し、あの人ならそれも仕方ないかと思わせる力がある。
CGアーティストの河口洋一郎氏による展覧会「東京大学 表現科学展−知のサバイバル」。
由緒ある湯島聖堂大成殿中庭に、古代生物を思わせる怪奇な立体造形物や自己増殖を繰り返す超高精細CG・立体視映像などが配置され、非日常的な異空間を出現させた。
河口氏の研究テーマは、「原始生命ロボティクス」。
これは、「5億年以上前のカンブリア紀の生物や過酷なサバイバルを生き抜いてきたムカデやヒトデなどの生物をCGシミュレーションし、多様性と変化に富んだ進化型生物をリアルに造形することで、宇宙探査や深海探査などで活躍するロボットを目指す」というもの。
展示作品の制作には研究機関から資金援助を受けているため、「原始的な生命が有する身体特性、サバイバルするための危険察知、コミュニケーション手段などをロボットに実装する」という「社会に役立つ」面を公にしておく必要があったようだが、展示作品から放出されるなんともいえないエネルギーに接すれば、そんなことはどうでもいいように思えてくる。