今年の箱根駅伝は、一人のスーパールーキーの快走とその活躍に刺激された部員たちの発奮により、東洋大学が初の総合優勝した。
企業が商品を開発・生産・販売する場合、大きく分けて「作ってから売り方を考える = プロダクトアウト」と、「購買者の視点、ニーズを重視する = マーケットイン」という手法がある。
ロボットは、良く言われているように、これまで極度な「プロダクトアウト」型の開発シーズ先行商品が多く、その結果、市場が立ち上がらない状態が続いてきた。
その反省から、ニーズ重視の「マーケットイン」型商品開発へと舵を切りつつあるが、数々の調査結果が示すように、一般ユーザーのロボットに対する要求は多種多様であり、かつ汎用性が高く、しかも廉価であることを求める傾向にあるなど、越えるべきハードルが極めて高い。
Ken Okuyama Designの奥山清行氏はその著書※の中で、方向性や目指すビジョンが見えてこないうちにニーズ調査をすることの危険性について、
「一旦リサーチして、「知ってしまった」ら、調査する前の「知らない」自分たちに戻ることはできない。情報には思わぬ力があるから、出てくるアイデアも影響を受けてしまう。
(中略)
今の時代、メーカーの技術力に大きな違いはない。違いが出るのは特色の部分で、そこで選ばれなければ、生き残ることは不可能だ。
特色をどう出すかも考えずにリサーチするのは、自殺行為に近い。まず自分たちの作りたいもの、作れるものを確認し、プロダクトの方向性を決める。それから、その方向性を軸にリサーチをかけ、結果に基づいて修正を加える。そうしなければ、ものづくりの世界で生き残る手段は、価格競争以外になくなる」
また、
ものづくりとは、未来の顧客のために創造し、物語を売ることであり、常識ではなく、良識を持つこと。実用的で必要だから買うものではなく、「買いたくて仕方のないもの」を作る「覚悟」が大切
とも述べている。
一般ユーザーは必ずしも自分が欲しいものを明確に知っているわけではない。
ロボットのような新しい製品やサービスは、やはり提供側が「メニューを提案」し、「ユーザーメリットを示す」必要があるだろう。
一人のスーパールーキーの登場により、チーム全体が発奮し、総合優勝した東洋大学のように、まずは「買いたくて、仕方のない」スーパールーキーなロボットの登場こそ、ロボット市場全体を牽引していく、やはりそれが理想の姿のような気がする。
※「人生を決めた15分 創造の1/10000」(ランダムハウス講談社)