トロイア遺跡の発掘で知られるハインリッヒ・シュリーマンは、その発掘に先立つ6年前に世界周遊の旅に出て、清国と幕末の日本を訪れている。※
旺盛な好奇心と客観的かつ偏見のないまなざしで見つめたその旅行記からは、幕末日本の生き生きとした雰囲気が伝わってくる。
その中で日本の家屋についての記述。
「日本に来て私は、ヨーロッパで必要不可欠だとみなされていたものの大部分は、もともとあったものではなく、文明が作り出したものであることに気がついた。寝室を満たしている豪華な家具調度など、ちっとも必要ではないし、それらを便利だと思うのはただ慣れ親しんでいるからにすぎないこと、それぬきでもじゅうぶんやっていけるのだとわかったのである」
イス、テーブル、ソファ、家具、電化製品 ・・・
現代の家屋は暮らしの必需品と思われるモノで埋まっている。
現代の暮らしを幕末の暮らしのように戻すことは難しいが、住宅をロボット化することで、幕末の暮らしのような「シンプルな生活スタイルへの転換」は可能な気がする。
イメージとしては、
必要と思ったときに必要なモノが出、また収納される部屋。
足し算ではなく、引き算の部屋。
住宅のロボット化により、「省エネかつ快適でシンプルな暮らし」への転換が可能となるなら、DINKSや子育てを終えた夫婦など都市型の生活スタイルを希望する人たちに受け入れられる余地は充分あるように思うが、どうだろう。
※「シュリーマン旅行記 清国・日本」(講談社学術文庫)