(つづき)
「ヒトと機械のあいだ」(岩波書店)で廣瀬通孝氏は、バリアフリー技術 = 装着型の機器によって、障害を補完する技術、について言及している。
人間はある機能が失われたとき、それをほかの機能が補うような形で変化する(適応)という。
例えば視覚を失うと、音だけでそうとう微妙なことを知覚できるようになり、鋭い人だと4m離れたところからでも6cmくらいの物体を認識することができるそうだ。
廣瀬氏は、バリア(障害)を持つ人々は、何らかの部分で健常者とは違った特性を有するという観点から、「バリアは個性」であるとし、バリアがあるからこそ見えてくる「新しい世界」があると述べている。
それゆえ、機械を装着することで、健常者を上回る能力を身につける可能性について、
「技術への参入障壁が健常者より小さいことは大きなアドバンテージである」とし、発展途上国が新規技術を導入することでハンデキャップを一気にプラスに転じるリープフロッギング(Leap flogging 蛙とび)現象も可能ではないか。
そして、「全ての人々が新しい技術に対して洗練されているはずがないため、新しい技術が世の中に広く行き渡るためには、はじめの段階に先端的なユーザが必要であり、
拡張型の機械の世界の最も先端的なユーザのある部分は、バリアを持つ人々が担っている」として、
個性を持つ人々に単一の規格を押し付けることのない「Intimate※な技術の活用」の大切さを指摘している。
※Intimate 「内心の、個人的な」の意。
メガネや入れ歯が個人だけのものであり、他人との共用がナンセンスであるように、今後コンピュータも個人と一体化していくというラップトップ型パーソナル・コンピュータの発案者、Alan Kayの言葉から。
参考 : 「ヒトと機械のあいだ」(岩波書店) 廣瀬通孝編